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2021.12.29 08:00

【2021回顧(上)】説明避ける政治に批判

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 新型コロナウイルス禍が暮らしを圧迫する中で、政治は引き続き説明責任が問われた1年だった。
 自民党総裁選に菅義偉首相が出馬を見送り、就任から1年余で退陣した。内閣支持率は低迷していた。衆院選を控えて若手議員らの不満が強まり、総裁再選への道筋が描けなくなってしまった。
 コロナ緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は、対象地域の拡大や期間延長が繰り返された。科学的な知見との向き合い方や後手に回る対策、国民への説明姿勢に批判が高まっていた。野党が求めた臨時国会の召集要請には応じず、議論を避ける姿勢が目立った。
 総裁選を経て、岸田文雄首相が誕生した。最初の臨時国会では所信表明演説とそれに対する代表質問は行われたが本格論戦は見送られ、新政権の基本姿勢が分かりにくいまま衆院選に入った。支持が高いうちにという思いだろう。国会軽視を引き継ぐことはあってはならない。
 衆院選は、自民は追加公認を含め単独で絶対安定多数に達した。立憲民主党は敗北し、日本維新の会が大きく伸ばした。
 立民の枝野幸男代表は責任を取って辞任し、泉健太新代表が党再建を担う。打ち出した「政策提案路線」に説得力を伴わせることができるかが焦点となる。世論調査では、統一候補を擁立した野党共闘関係は6割が見直しを求めている。来夏の参院選をにらみ再構築が迫られる。
 岸田政権は、成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」を掲げる。安倍政権からの成長重視の経済政策「アベノミクス」は貧富の格差を拡大させたと指摘される。その解消が課題なのは間違いない。
 そのために中間層復活への意欲を示すものの、当初打ち上げた金融所得課税の強化が後退するなど、軸足が定まらない印象が残る。コロナ禍で傷んだ暮らしや経済の立て直しは急務となっている。安倍・菅政権との違いをどう具体化するのか明確にはなっていない。
 「政治とカネ」は相変わらずくすぶり続け、この問題での議員辞職が相次いだ。参院選広島選挙区で買収事件に絡む自民党資金は解明されず、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題も混乱を終わらせる様子はうかがえなかった。
 政官業の癒着の根深さを見せつけるような接待問題も浮上した。総務省幹部の接待には、菅前首相の長男が関わっていた。行政がゆがめられたのではないかと疑念を招く行為がなぜ行われるのか。忖度(そんたく)とたるみの風潮をはびこらせないよう警戒する必要がある。
 日本学術会議の会員候補の任命拒否や、森友学園を巡る財務省決裁文書改ざんも放置できない問題だ。
 衆院選後には、歳費とは別に支給される「文書通信交通滞在費」が注目された。しかし臨時国会での法改正は見送られた。透明性を確保しなければ政治の信頼は高まらない。
 国会論戦の活性化が不可欠だ。信頼向上への課題は持ち越された。

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