2021.12.28 08:00
【オミクロン株】年末年始の警戒怠らずに
市中感染が拡大している可能性がある。厚生労働省に対策を助言する専門家組織から、オミクロン株による流行が始まってもおかしくない状況にあるとの見方が示された。
落ち着きを見せていた感染者数は緩やかながら増加傾向にある。人の動きが活発になる年末年始を控え、岸田文雄首相は帰省や旅行を慎重に検討するよう呼び掛けた。警戒を強めてこの時期を乗り切りたい。
オミクロン株は変異によって感染力が増したとされ、ワクチン2回接種後でも感染が相次いでいる。市中感染が起きている国では、感染者が急速に増えている。
政府は水際対策の一環で外国人の新規入国を禁止した。一定の効果はあったとみられる。しかし、国内流入は避け難かったようだ。
重症化する度合いは高くないとの見方もあるが、確定したわけではなく楽観はできない。感染者が増えれば医療体制を圧迫しかねない。入院できないまま自宅で死亡した人がいたことを忘れてはならない。
国内で急拡大した場合に対応するため、政府は都道府県に検査や医療体制の点検と強化を要請した。自宅療養者が急増しても健康観察や診断ができる体制の構築や、確保した病床の迅速な利用を求めている。
政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、今の時期に国や自治体、市民が感染対策に取り組めば、自宅で亡くなることを防ぐことはできると指摘している。感染を遅らせピークを低くすることで医療体制への負荷は軽減できる。対策を徹底したい。
振り返ると、流行「第3波」は昨年11月ごろに広がった。しかし、観光支援事業「Go To トラベル」の見直しを求める意見が強まっても、菅政権は全国一時停止にはなかなか踏み込まなかった。
年明けには首都圏1都3県に新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令される。高知県へのまん延防止等重点措置の適用など、対象拡大や期間延長が繰り返された。対応が後手に回ることに批判が高まり、内閣支持率の低迷から退陣につながった経緯がある。
岸田政権は危機管理の重要性は十分承知しているはずだ。市中感染やクラスター(感染者集団)の発生地域などで、希望者全員に無料の検査を実施する方針を表明している。抑え込みへの積極姿勢は歓迎される。
だが、性急な方針の打ち出しや自治体の意向を把握しないままでの対応では混乱を招いてしまう。
国際線の新規予約停止を要請しながら一転して撤回した。ワクチンの3回目接種前倒しは説明が足りず、18歳以下への10万円給付も方法が定まらなかった。オミクロン株感染者の濃厚接触者の大学受験を認めないとしたことに不安が広がった。
意思決定に疑問が向けられては政策の信頼と安心にはつながらない。