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2021.12.24 08:00

【東京五輪経費】厳格な検証が必要だ

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 東京五輪・パラリンピック組織委員会は、開催経費が総額1兆4530億円との決算見通しを公表した。昨年12月段階の予算計画より1910億円減り、組織委は削減効果を強調する。だが、この自己評価はそのまま受け入れられない。
 招致段階で国際オリンピック委員会(IOC)に提出した「立候補ファイル」では、開催経費を7340億円としていた。2倍近い規模である。さらに決算見通しに含まれない巨額の関連費用もあり、全体像はまだ不透明と言える。
 大会で日本は多くのメダルを獲得し、アスリートの躍動する姿はコロナ禍に苦しむ社会に希望を与えた。とはいえ、「想定外」でもない経費の膨張とは別の問題である。厳格に検証しなければならない。
 組織委の説明によると、大半の会場が無観客となり、チケット収入分など867億円の減収となった。一方で支出を239億円抑制。差額の628億円は東京都が従来予算の枠内から安全対策の負担金名目で充当し、実質的に肩代わりする。
 これにより、組織委の支出と収入は同額となった。都や国に追加の公費負担は発生しないという。
 経費削減の中身は、仮設工事費や会場使用料のほか、大会関係車両など輸送関連や警備費用などだった。コロナ禍で関係者の来日が減ったことや無観客開催が結果としてコスト削減につながったようだ。
 東京大会ではアスリートと住民の交流機会、観客がつくり出す祝祭感など大会本来の魅力が発揮されなかった。インバウンド(訪日客)による経済効果も失われた。そうした状況がコスト面で功を奏したのは皮肉というほかあるまい。
 ただ、組織委の決算見通しが大会にかかった費用全てを含んでいるわけではない。都は直接の大会経費以外にも、暑さ対策やバリアフリー化など関連事業に7千億円余りを計上する。実質的には少なくとも2兆円を超える規模となる。
 東京五輪が掲げた「コンパクト五輪」の看板には疑問符を付けざるを得ないだろう。誘致段階と実施の経費の差に都民はもちろん、多くの国民が驚かされたに違いない。
 そもそも誘致段階の「見積もり」には、不透明なからくりがあった。立候補ファイルは、IOCが指定した経費だけを記載する仕組みになっていた。例えば、会場整備でいえば本体工事費のみを計上し、設計や撤去、周辺整備などの費用は含まないといった具合だ。
 近年の五輪は巨額の開催費用が問題視され、立候補する都市も減っている。IOCは誘致段階での見た目の経費を抑え、立候補国での批判を避けようとしたのではないか。結果的に、開催地の国民は実態からかけ離れた負担を背負わされた格好だ。IOCの責任は重い。
 国内では、2030年冬季五輪・パラリンピックの誘致に札幌市が乗り出している。果たして巨額の投資に見合う成果が見込めるのか。慎重に見極める必要がある。

高知のニュース 社説

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