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2021.12.22 08:00

【臨時国会閉幕】論戦の充実が欠かせない

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 臨時国会が閉幕した。岸田文雄首相が初めて臨んだ野党との本格論戦は、説明回避が際立った安倍・菅政権のような姿勢は後退したとはいえ、つかみ所がない印象も残った。
 来夏に参院選を控え「岸田色」を抑えた側面も指摘される。しかし、政策へのこだわりまで薄れるようでは心もとない。
 政策立案型を志向して野党が追及の迫力を失っては元も子もない。国会論戦を充実させ、政策の質を高めていく必要がある。
 新型コロナウイルス対応の経済政策を裏付ける2021年度補正予算が成立した。一般会計の歳出は36兆円に迫り、補正予算として過去最大となった。18歳以下に10万円相当を給付する財源を手当てした。一部は21年度当初予算のコロナ対策予備費から支出し、補正と合わせて費用は計2兆円となる。
 これほどの規模でありながら、政府が丁寧な制度設計を行ってきたとは言い難い。与党合意の枠組みはたびたび変更された。最終的には、現金5万円とクーポン5万円を2段階で給付する方式を基本としながら、現金での一括給付や現金5万円の2回給付を選べるようになった。
 クーポン給付は事務経費が膨らみ、また自治体の事務負担が増加する。新型コロナの3回目ワクチン接種への準備も重なり、不満が高まったことに対応した。自治体の判断に委ねる形で決着したが、当初から自治体側の意向を探っていれば混乱の多くは避けられたはずだ。
 そもそも景気浮揚効果は過去の事例から疑問が向けられている。クーポン導入で子育て支援と消費喚起を狙ったはずだが曖昧になり、政策の目的が分かりにくくなった。これでは政権の姿勢にも関わってくる。
 補正の歳出は経済対策関連が9割近い。コロナ禍での中小事業者支援や観光支援事業「Go To トラベル」再開のほか、保育士や看護師らの賃金引き上げ費用を計上した。また、半導体の生産拠点を国内に確保する基金に6千億円を盛った。
 コロナ禍で傷んだ社会経済を立て直し、将来の成長への布石も必要となる。だが、歳出規模を膨らませて効果への目配りが乏しいと、将来負担を増やす一方となる。
 歳入の6割の22兆円余は国債を発行して穴埋めする。当初予算と合わせた21年度の歳出総額は142兆円を超え、新規国債の発行額は計65兆円を上回る。過去分を含めた発行残高は21年度末に1千兆円を超えそうで、重くのしかかってくる。
 今国会の焦点となった国会議員に支給される「文書通信交通滞在費」の法改正は、扱いが先送りされた。与野党は当初、日割り支給の実現でほぼ一致している。しかし、使途公開が絡むと足並みが乱れた。
 文通費は詳細な使途は定められていないとはいえ、その名目に使われるべきものだ。経費は領収書を添えて実費精算することが本来の姿だろう。「第二の歳費」ではない。「政治とカネ」問題に連なることであり、真剣に向き合う必要がある。

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