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2021.12.21 08:00

【郵便局情報紛失】企業統治の立て直し急げ

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 不祥事が続く日本郵政グループでまた、ずさんな管理態勢が明らかになった。
 日本郵便とゆうちょ銀行は、本県を含む全都道府県の郵便局で金融商品などを取引した顧客の個人情報を紛失していたと発表した。金融商品を扱う約2万局のうち約3割で発覚し、延べ29万人分に上るという。
 厳格さが求められる金融機関として、組織の体質そのものが問われている。ガバナンス(企業統治)不全を度々指摘されていることをもっと重く受け止める必要がある。
 投資信託や国債など金融商品は、ゆうちょ銀行が同じグループの日本郵便に窓口業務を委託して販売している。顧客の氏名やゆうちょ銀行の口座番号、取引記録を記した「金融商品仲介補助簿」は取引時に作成し、金融商品取引法で7年の保存が義務付けられている。社内規定では保存期間を10年としていた。
 昨年11月に全国4局で計318人分の個人情報を紛失したことが発覚。その後、全郵便局を調査したところ、6500局以上で紛失していた。
 日本郵便によると、保存期間を誤って廃棄したとみられる。情報が外部に流出した可能性は低いとしている。しかし、これほど広範囲でずさんな管理がまかり通っていたとすれば、組織の体質に問題があると言うほかない。
 調査も時間がかかり過ぎだろう。果たして問題の重要性を認識しているのか、疑問を禁じ得ない。
 郵政グループでは近年、不祥事が後を絶たない。先月にも、一部の郵便局長らが顧客向けのカレンダーを政治活動に流用していたと公表したばかりだった。
 特に、2019年に発覚した日本郵便やかんぽ生命保険による大規模な保険の不正販売は悪質で、利用者に与えた衝撃は大きかった。
 旧契約を解約して新契約に乗り換えさせ、顧客に新旧の保険料を二重払いさせたり、一時的に無保険状態に陥らせたりしたケースもあった。虚偽の説明をする法令違反、家族を同席させずに高齢者と契約する社内規則違反も常態化し、不正契約は18万件を超えた。
 電子決済サービスを悪用した貯金の不正引き出し問題でも、公表や対応が遅れたことで被害の拡大を招いた。
 不祥事が続く背景には金融商品の増加のほか、住民票の写しの交付といったサービス拡充による負担感があったのかもしれない。
 ただ、これだけ不祥事が続発すれば、組織が危機的な状況に陥っているのは間違いない。「郵政ブランド」の信頼回復は容易ではない。根本から企業統治を立て直す覚悟が求められよう。
 07年に民営化されて株式会社になっているとはいえ、郵便局には高い公共性がある。
 全国の津々浦々に広がる国民の重要なインフラという存在に変わりはないはずだ。だからこそ地域住民が安心して利用できるよう、自己改革に努めなければならない。

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