2021.12.14 08:00
【クロマグロ増枠】持続的漁業へ資源管理を
15年に現行の漁獲規制が導入されて以降、初めての増枠になる。規制が功を奏して、激減していたクロマグロの数は徐々に回復している。
国際的な資源管理の仕組みが有効に機能した意義は大きい。その成果と言える枠拡大だ。
漁業管理の国際機関である中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合で合意した。
日本は過去3回、増枠を提案したが、米国や島しょ国の反対で退けられてきた。今回は資源の回復傾向を示すデータを基に交渉が進展した。
クロマグロは乱獲で、親魚の資源量がピーク時の1割(約1万1千トン)まで激減。漁獲規制後、約2万8千トンに増えている。
国内の漁業者は漁獲枠を超過しないよう、取ったクロマグロを放すなどして資源管理に取り組んできたという。待望の増枠が決まり、喜びは大きいだろう。
人気の高い「本マグロ」の天然物が市場に出回る量が増えそうだ。値段が下がる可能性もある。
とはいえ、クロマグロの資源回復は途上にある。今後も科学的なデータを見極めながら、慎重に枠を設定することが欠かせない。
WCPFCはクロマグロだけでなく、カツオも対象にしている。世界的にカツオの消費量が増えており、乱獲の問題も大きくなっている。
今年、県内のカツオ漁は久しぶりの豊漁に沸いたが、近年は慢性的な不漁に悩まされてきた。関係者は資源の危機を実感しているという。
熱帯海域の巻き網漁が増えたことで、日本近海まで北上するカツオが減ったと考えられている。
ただ、熱帯海域を主漁場にしている太平洋の島国は、規制強化への動きに強く反発している。
今回もカツオの規制は、乱獲につながる集魚装置を使った操業に禁止期間を設けるなど、現行の措置を継続することになった。
資源保護の観点からは規制を強化すべきだが、カツオの回遊ルートが調査で十分に裏付けられていないなど、国際交渉を進める上での課題がある。次回会合に向けて、説得力のある戦略を描きたい。
魚全般の資源量が減っている状況もある。20年の養殖を含む国内の漁獲量は417万5千トンで、2年連続で過去最低を更新した。ピーク時の1984年から約7割も減っている。
とりわけ、深刻な不漁が続いているサンマ、密漁の撲滅が課題になっている「白いダイヤ」ことシラスウナギ…。適正な管理が急務となっている水産資源は数多い。
漁獲規制など乱獲を防ぐ仕組みの遅れが資源減少につながったとも指摘される。地球温暖化の影響もより大きくなっている。
資源が回復しつつあるクロマグロをモデルケースに、持続可能な漁業に向けて、国際的な資源管理を進めていく必要がある。