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高知新聞PLUSの活用法

2021.12.16 00:04

【K+】vol.180(2021年12月16日発行)

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K+ vol.180 
2021年12月16日(木) 発行

CONTENTS
・はじまりエッセイ letter182 中西なちお
・特集 小さな冒険|Ocho Outdoor & Cafe
・フランスからの土佐人便り BONCOIN IN PARIS✉28
・高知を元気に! うまいもの熱伝 volume.54|田村カブ@仁淀川町
・K+インタビュー 話をしてもいいですか vol.182 土居郁男
・K+ cinema 記憶のなかの映画館⑭
・ちいさいたび #5
・夏葉社 島田 潤一郎|第58回|読む時間、向き合う時間
・Sprout Table vol.5 kotokotoキッチン
・+BOOK REVIEW
・なにげない高知の日常 高知百景
・小島喜和 心ふるえる土佐の日々 第二十七回
・Information
・シンディー・ポーの迷宮星占術
・今月のプレゼント

河上展儀=表紙写真


特集
小さな冒険
Ocho Outdoor & Cafe

仙頭杏美=取材 河上展儀=写真

家族の成長とともに仕事を生む夫婦が今手掛けるのは、ずっと使いたいキャンプ道具作り。


非日常を楽しむキャンプ

 鳥の鳴き声や川のせせらぎに耳を傾けながら、自然の時の流れに身を置く。日没前の数十分だけ楽しめるマジックアワーは、太陽が空を美しく染めて見入ってしまいます。アウトドアチェアに腰掛け、それを眺めた後は、焚(た)き火で作った料理を味わう時間。食事を終えたら星空を眺め、テントで虫の声を聞きつつ眠る。その非日常の時間に、お気に入りのキャンプ道具が寄り添ってくれます。
 「キャンプは終わりがあるから楽しめるのだと思います。日常生活から離れ、自分で何でもやる必要がある、ちょっとした冒険の時間。火をおこす、お湯を沸かすことも自分でやると感動します」と話すのは、香美市香北町にあるオーチョ・アウトドア&カフェの西奥起一さんと妻の栄利子さん。京都出身で、芸術家でもある2人は、元々、同市でカフェ&ギャラリーを営んでいましたが、子どもが成長し、昔から好きだったキャンプに家族で行くようになると、キャンプ熱が再燃。自分たちの使いたいと思えるキャンプ道具を作りたいという思いが湧き、2015(平成27)年、キャンプブランドを立ち上げます。作るのは、長く使える〝質感〟のある道具たち。



長く使いたいキャンプ道具

 美大出身の起一さんと栄利子さんは、メキシコに住みアート活動をした後、2005(平成17)年に帰国。茨城で暮らし、その後、高知へ移り住みます。田舎でアート活動をしながら夫婦で働ける仕事として、カフェとギャラリーを始めようと場所を探し、縁があったのが高知でした。09(同21)年、築150年の古民家を改装してカフェを始めます。忙しく働く日々の中、2人の娘との時間が取りづらいと感じていました。キャンプブランドを立ち上げたのは、家族と過ごす時間をつくりながら仕事ができると思えたことも理由の一つです。今は、週末のみ店を開き、それ以外は、商品作りや家族でキャンプイベントに出掛けたりしています。


焚き火の火を見ている時間が一番好きという栄利子さん。ソロキャンプでは、読書やお酒を楽しむなど、自由に過ごすとのこと

焚き火の火を見ている時間が一番好きという栄利子さん。ソロキャンプでは、読書やお酒を楽しむなど、自由に過ごすとのこと





 オーチョキャンプのキャンプ道具は、職人の手作り。織物は、メキシコの職人の手染め、手織りです。現地に足を運んで直接やりとりし、柄はメキシコの伝統を生かしながら2人の好みを組み込んだオリジナル。さらに、高知の家具職人、土佐打刃物職人、大阪の革職人などと共に商品を作ります。大切にするのは〝質感〟。経年劣化で味わいが深まり、修理しながら一生使える品を目指します。
 また、昨年、新商品としてマルチプルアートシリーズを発売しました。「新型コロナウイルスの影響で、メキシコから織物が入手できなくなりました。今後も同じことが起こる可能性があるので、自らの手で作る品も必要と感じました」。その第1弾が、鹿のオブジェです。身近にある枝や草花を飾って角に見立てられる品。「商品とアート作品の間のような、私たちの作品だと思っています」

今年リニューアルした店舗。2人が実際に使って気に入ったアウトドアブランドの道具も並ぶ

今年リニューアルした店舗。2人が実際に使って気に入ったアウトドアブランドの道具も並ぶ


夫婦で手作りしているマルチプルアートシリーズの鹿のオブジェ

夫婦で手作りしているマルチプルアートシリーズの鹿のオブジェ



プロフィール
西奥起一さん
京都の美大で講師を務めた後、メキシコで暮らす。その後、高知に移住してカフェを始め、2015(平成27)年キャンプブランドを設立。学生時代からカヌーが趣味。京都府出身。53歳

西奥栄利子さん
京都の美大を出た後、起一さんとメキシコでアート活動を行い、共に高知へ。自身の両親の影響でキャンプ好きに。現在は、ソロキャンプも行う。京都府出身。44歳


店のお客さんを集め、栄利子さんは女性のソロキャンプに、起一さんはパックラフトに出掛けることも。皆で行くと助け合える良さがあるそう

店のお客さんを集め、栄利子さんは女性のソロキャンプに、起一さんはパックラフトに出掛けることも。皆で行くと助け合える良さがあるそう


自ら考え、行動すること

 2人が新たに力を入れるのが、週2回行う「こどもアート教室」です。娘をアート教室に通わせたかったけれど、身近になかったので始めたと話します。大事にしているのは、子どもたちが自分の好きを発見し、自分らしさを出せる場づくり。
 「私は今、目に見える作品は作ってないですが、アート教室や日々の中で課題を見つけ、創造するような考え方で暮らしています。それもアート活動なのかなと」と栄利子さん。「アートは答えを探すのではなく、自ら問題を探し出して、問題提起をすることだと考えています。その問題を発見する力を磨いてほしい」と起一さん。それは、キャンプにも通じるのだと言います。



左/ランタンマント、右/ボトルカバー

左/ランタンマント、右/ボトルカバー


左/トートバッグ、右/タペテチェア

左/トートバッグ、右/タペテチェア


 キャンプで必要なのは、「自ら考え、行動する力」。「キャンプは知識がないと事故につながることもあります。与えられた知識だけでなく、学んだことを基に自分なりのやり方を見つける。その先に、本当の楽しさがあると思います」。今年、ソロキャンプを始めた栄利子さんは、それをより実感しているそう。「家族でいると自分の役割が決まってきます。1人でキャンプをすることでその役割が壊せ、自分でできることが増やせるのがいいです」
 これまでのさまざまな経験と、家族の成長に合わせて仕事をつくり、常に変化することを忘れない2人。「すぐに行動できる自分でいたいので、そのためにも小さな一歩を踏み出し続けたいです」。そう話す夫婦の次の一歩が楽しみでなりません。
 そしてキャンプは、自分の新たな一歩を踏み出すための、小さな冒険の場なのかもしれません。

便利なアウトドアグッズがいろいろあり、それを使えば手軽に料理が作れるそう。この日は、パエリアとソーセージのグリル、野菜スープの3品

便利なアウトドアグッズがいろいろあり、それを使えば手軽に料理が作れるそう。この日は、パエリアとソーセージのグリル、野菜スープの3品


店に足を運べば、2人のこれまでの経験から得た道具やキャンプの知識を丁寧に伝えてくれる

店に足を運べば、2人のこれまでの経験から得た道具やキャンプの知識を丁寧に伝えてくれる



◎Ocho Outdoor & Cafe
香美市香北町永野207
TEL 0887-59-3759
HP/http://ocho-camp.com
店舗の営業日 Instagram/@ocho_oc
こどもアート教室について Instagram/@art_ocho8
<販売先>店舗または、自社HPより

掲載した内容は発行日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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