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2021.12.12 08:00

【代表質問】説明が混乱を遠ざける

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 岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問が行われた。
 新型コロナウイルスは重大な課題だ。首相はコロナ禍を克服し、新たな時代を切り開くと決意を示している。新たな変異株「オミクロン株」が世界で急拡大し、警戒が怠れない状況にある。
 経済の立て直しや生活支援の充実を急ぐ必要がある。首相は「新しい資本主義」を唱え、成長と分配の好循環を具体化する考えだが、要の一方の分配は後退が指摘される。
 そうした中で、18歳以下の子どもへの現金とクーポンによる計10万円相当の給付は、その在り方が論点の一つとなった。首相は柔軟に対応する姿勢を見せたが、検討の甘さも浮き彫りになった。
 この対応では、現金一括給付に比べ事務経費が900億円を超える増加となる。世論の批判に加え、実務を担う地方自治体に戸惑いが広がった。首相は自治体の実情に応じて現金での対応も可能と表明した。
 来年夏の参院選へのダメージを警戒したのだろう。ただ、そもそも経済対策として消費を押し上げる効果が判然としない。子育て関連に使えるクーポンの利用で貯蓄されることを回避する狙いだったが、新たな対応でそうした懸念を拭い去ることができるのだろうか。
 もちろん全額現金を歓迎する声はある。状況に応じて対応を変える柔軟性も必要だ。しかし、それに至る経緯や効果を丁寧に説明し、現場の負担軽減策を探らないままでは自治体側をさらに混乱させる。
 首相は例外の対応をより広げる姿勢を明確にした。2021年度補正予算成立後に運用方法を示すという。立憲民主党は自治体の判断で全額現金による一括給付を可能にする法案を提出して対抗している。
 大切なのは自治体との対話だ。新型コロナワクチンの3回目接種の前倒しでも自治体側を困惑させた。
 水際対策である国際線の新規予約の停止を巡る混乱もあった。こんなことでは政府の意思決定の在り方が不安視されかねず、改善は急務だ。「聞く力」をアピールする首相は、説明にも力を注ぐ必要がある。
 国会議員に支給される「文書通信交通滞在費」の法改正は、与党側は今国会で日割り支給のみ応じる構えだ。使途公開で透明性を高めなければ、「政治とカネ」問題の解消と向き合う姿勢が疑われる。
 森友学園問題を巡る財務省決裁文書改ざんなど、政治の信頼回復に取り組むべきことは多くある。首相は文書管理の徹底に取り組む考えを示すが、まず事実関係の解明を進めなければ信頼にはつながらない。
 新体制で臨んだ立民は泉健太代表が「政策提案路線」に沿い、17項目を提案した。「批判ばかり」を意識したのだろうが、迫力には評価が割れる。厳しい言葉を重ねた西村智奈美幹事長との役割分担かもしれないが、新執行部の成熟が不可欠だ。
 論戦の舞台は一問一答形式の予算委員会に移る。補正予算案など審議の充実が求められる。

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