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2021.12.10 08:47

「居場所あるから学校に」高知県内中学校、校内に「適応指導教室」設置し欠席減 担当教員常駐し、生徒見守り 

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不登校や教室に入りづらい生徒の学習を支える「適応指導教室」(高知市江陽町の城東中)

不登校や教室に入りづらい生徒の学習を支える「適応指導教室」(高知市江陽町の城東中)

 学校の教室が苦手な子どもらのために、校内に居場所となる“学びの部屋”を置く取り組みが高知県内で進んでいる。現在は5中学校(高知市2校、香南、南国、四万十市の各1校)が実施しており、不登校や、集団生活が苦手な子ら約65人が利用。生徒は「居場所ができてうれしい」と喜んでおり、欠席日数が減るなどの効果も出始めている。

 2019年度の文部科学省の調査で、県内小中学校の不登校(1年間に30日以上欠席)の児童生徒は1117人。千人当たりでは22・4人で全国4番目の多さだった。昨年度は1238人で、千人当たり25・2人と全国最多となった。

 そこで高知市教委は昨年度に、県教委は本年度に、「適応指導教室」を校内に設ける取り組みを始めた。子どもと学校の接点を保ち、不登校の未然防止や学校復帰などにつなげる狙いがある。

 同市の城東中の適応指導教室「学びの保健室タンポポルーム」には、不登校と不登校傾向の生徒20人が登録。担当教員が常駐し、1日平均11人が通う。

 大部屋やパーテーションで仕切られた個室、交流室があり、生徒は自分で過ごす場所を選べる。各教科の教員による授業を複数人で受けたり、タブレット端末を使ってクラスの授業のライブ配信を受けたり、個室で自習したり。担当教員が見守る温かな雰囲気の中、生徒同士のつながりも生まれており、休み時間には一緒に卓球を楽しむ姿も。

 担当教員は生徒の出欠状況や日々の様子を記録し、定期的に校内で個々の支援策を協議。こうした支えもあり、昨年度は1日も学校に来なかった複数の生徒が毎日通学するように。自分のクラスに戻った子もいる。

 利用する生徒たちは「ここがなかったら、たぶん学校に来てない」「仲間ができた」「先生が教えてくれるので前向きに勉強できる」と歓迎。大谷俊彦校長も「子どもの特性に応じて柔軟な対応をするフリースクールのような場」と言う。

 同様の取り組みは、同市の城北中でも行われており、担当教員は「クラスなどでは生まれなかった自己有用感を育む場にもなっている。所属学級とは別に、子どもが選択肢を持つ意義は大きい」。

 城東中の取り組みを研究している、高知大学大学院総合人間自然科学研究科の是永かな子教授(特別支援教育学)は「子どもの声や出席率の改善から見ても、成果は大きい」と評価。ただし、支援と指導のバランスが大事と指摘し、「支援だけだと甘やかしになり、成長の機会を奪うことがある。指導だけだと頑張れない子どもを切り捨てることになる。それぞれの子どもの状況を見極めることが大事」と訴える。

 現状、不登校の子は各市町村が設ける教育支援センターに通う選択肢があるが、距離の遠さなどから通えない生徒もいる。教室に入れない生徒らは空き教室で自習し、手の空いた教員が見守りをしているが、教員や教室が入れ替わる不安定な状況で、学習支援の態勢も弱いという。

 県教委は23年度までに指定校を11小中に拡大。将来的には、他校の不登校の生徒らも通う拠点校にしていきたい考えを示している。(石丸静香)

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