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2021.12.06 08:00

【虐待の一時保護】対策強化へ司法審査を

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 児童虐待対策として、子どもを親から引き離す一時保護に司法審査として「一時保護状(仮称)」の導入が検討されている。
 児童相談所の一時保護を巡る判断は適正だったのか。過去の虐待死事件で問題になったケースは多い。
 裁判官が妥当性を判断する仕組みをつくることで、より適切な一時保護を目指すべきだ。子どもの安全を確実に守る対策につなげたい。
 厚生労働省が児童福祉法改正案の国会提出に向け、社会保障審議会専門委員会に示した案の柱である。
 一時保護状による司法審査は、親権者の同意がない場合を想定している。保護の前か後に児相が保護状を請求し、裁判官が適切かどうかを判断する。
 虐待による一時保護件数は年々増えており、2019年度は3万件を超えた。
 親子を分離し、子どもの自由を制限する強大な権限行使であるにもかかわらず、行政機関である児相が自ら判断し、強制措置を実施している点が長年の課題になってきた。
 家庭に介入する児相と、一時保護に不服のある親権者との対立も絶えない。一方で、子どもの心身を守るため、児相は必要な一時保護をためらってはならない。
 司法審査が加わることで、児相は難しい判断の一時保護にも思い切って踏み出せる面があるだろう。措置の過程における透明性もこれまでより確保される。
 運用に向けては、児相の法的な事務負担が増える。弁護士の配置を拡充するなど体制強化が必要だろう。
 当事者の子どもの意向を聞き、意見表明権を保障する「子どもアドボカシー(権利擁護)」も進めたい。
 厚労省の検討案では、一時保護などに際し、子どもの意向を把握し勘案するよう法令などに規定する。都道府県の努力義務として、児童福祉審議会を活用した権利擁護の仕組みを整備することも盛り込んでいる。
 親権者と児相の間で板挟みになり、本音を言い出せない当事者の子どもも多いという。虐待する親に逆らえず、対応を強要されている場合もある。弱い立場にある子どもの意向を十分に聞き取ることは、安全確保の上でも重要である。
 検討案では、虐待予防などに向け、低所得の若年妊婦や子育て家庭に対する市町村の支援強化も打ち出されている。
 若年妊娠や貧困の問題を抱える「特定妊婦」への支援策が課題だ。望まない妊娠が赤ちゃんの遺棄や虐待につながるケースもある。
 妊娠中から支援する必要があるが、相談をためらって孤立している人も多いとされる。市町村の福祉・保健担当らが支援のニーズをつかみ、病院などの関係機関と連携し、子育てを継続して見守っていく体制づくりが求められている。
 児童虐待対策には、子育てを社会全体で支える「社会的擁護」の観点が欠かせない。子どもがどんな境遇に生まれても健やかに成長できる支援体制を構築する必要がある。

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