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2021.11.28 08:00

【国際人権侵害】国内の改善も急がれる

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 政府は、日本企業の人権対応を後押しする方針を決めた。
 「人権尊重」が世界的な課題になっているためだ。米国や欧州連合(EU)は、中国や新興国の人権問題を看過しない姿勢を強めている。
 海外の原材料調達先や生産拠点で人権が侵害されていないか。企業がリスクを把握し対応する「人権デューデリジェンス(DD)」の導入を加速させたい。
 岸田文雄首相は国際人権問題担当の首相補佐官を新設し、中谷元氏(衆院・高知1区)を起用した。人権外交の最前線で手腕が問われる。
 中国の新疆ウイグル自治区で生産された「新疆綿」を巡っては、少数民族ウイグル族の強制労働が疑われ、欧米各国が輸入を規制。日本のアパレル業界にも影響が及んだ。
 サプライチェーン(供給網)の人権問題が経営リスクに直結する状況になっている。日本ではその対応が業界任せ、企業任せになり、遅れてきた実態がある。今回、政府がようやく重い腰を上げた格好だ。
 政府の支援策は国際労働機関(ILO)と連携して企業の人権DD導入を促し、供給網を管理する専門人材の育成なども支援する。
 中谷氏は「企業における人権尊重は責務だ」と述べて、日本企業の競争力維持のため対応を急ぐとしている。
 欧州では人権尊重を企業に義務化する法整備も進む。法的基準を満たさなければ、日本製品が市場から締め出される恐れもある。官民が連携しての対応強化が欠かせない。
 中谷氏は「中国をはじめ、さまざまな国で問題が懸念されている」とし、基本的人権を尊重する同志国との緊密な連携も強調した。
 欧米で整備が進む、人権侵害に関与した外国当局者らに制裁を科せる法制度作りも論点になろう。
 中谷氏は就任前の4月に、そうした人権侵害制裁法の成立を目指す超党派議員連盟を設立し、共同会長を務めていた経緯がある。
 とはいえ、制裁法の整備に関しては、現在は「何ができるのか、あらゆる面で検討する」と述べるにとどめている。この課題も真剣に考える必要があるだろう。
 一方、国内にも改善すべき状況がある。日本の外国人労働者数は2020年に172万人に達し、15年に比べ約9割増えたが、長時間労働やハラスメントの横行が深刻だ。
 米国務省は人身売買に関する報告書で、特に日本の外国人技能実習制度を問題視。強制労働による人権侵害の温床との見方を示し、日本政府に監視強化や厳罰化を求めた。
 中谷氏は、技能実習生を含む国内の外国人労働者の人権課題にも対応する考えを示した。国際的な批判を払拭(ふっしょく)する対応が急がれる。
 来年2月の北京冬季五輪への対応も懸案だ。米国や英国などは中国の人権問題を理由に外交使節団を派遣しない「外交的ボイコット」を検討している。日本は同調するのか。岸田首相は慎重に検討、判断する必要がある。

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