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2021.11.24 08:00

【中国の核増強】際限なき軍拡に陥るな

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 中国が米国、ロシアの2核大国に迫ろうとする動きを強めている。
 2030年までに少なくとも千発の核弾頭を保有する意向を持っている公算が大きい。米国防総省が発表した中国の軍事動向に関する年次報告書はこう指摘した。
 昨年の報告書が400発台とした推定を大幅に上回る。中国軍が創設100年を迎える27年までに、最大700発の核弾頭が保有可能となるとの見通しを示している。
 中国は核戦力の近代化、多様化を進めている。最低限の水準に制限していると反発しつつ、核軍備管理の枠組みへの参加はかたくなに拒んでいる。このまま軍備増強が進めば世界の核軍縮にも大きな影響を与えてしまう。際限のない軍拡競争に陥ってはならない。
 報告書は、中国版「核の3本柱」を構築した可能性に言及する。空中発射弾道ミサイル(ALBM)、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)だ。ミサイルの多様化は軍事オプションの増加につながり、各国の警戒感を高めていく。
 中国は核弾頭が搭載可能で、音速の5倍以上の速度で飛行するとされる極超音速兵器の発射実験を行ったようだ。軍事バランスを崩す恐れがあり、米軍に強い衝撃を与えた。台湾情勢を巡る米中対立の激化も懸念され、新たな対応を迫られる。
 米国は02年にロシアとの弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から一方的に離脱し、従来型ミサイルなどの迎撃を想定したミサイル防衛に力を入れてきた。極超音速兵器が実戦配備されれば防衛網をすり抜けることが想定され、その有効性が揺らいでしまう。
 中国の兵器開発の動向が不透明なのは強い懸念材料だ。
 冷戦終結を後押しした米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は、トランプ前米政権がロシアの違反を理由に破棄を通告し19年に失効した。条約の対象外だった中国が、この間に大量の中距離ミサイルを配備したことへの反発も大きい。
 核弾頭の9割を保有する米ロに唯一残る核軍縮条約である新戦略兵器削減条約(新START)も失効目前となった。トランプ政権は軍拡を進める中国が参加しないことにも不満を示し、3カ国による新たな枠組みの必要性を主張していた。
 確かに中国の軍拡を抑止しなければならない。しかし、米ロの圧倒的な核保有が、中国が核管理枠組みへの参加を拒む理由とされる。米ロが核削減の動きを止めてしまうと、米ロの大量保有を口実にした中国のさらなる軍拡を招いてしまう。
 バイデン政権の発足で米ロは5年間の延長に合意し、「戦略的安定対話」を継続している。米中首脳会談でも成果はなかったようだが、こうした動きに中国を巻き込み、新たな枠組みを構築する必要がある。
 米中の覇権争いは、台湾情勢での偶発的衝突の懸念を強める。日本も無関係ではない。軍縮への動きを後押しする努力が欠かせない。

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