2024年 05月05日(日)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

2021.11.22 08:00

【行動制限緩和】医療体制整備と一体的に

SHARE

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大の防止策として国民に求めてきた行動制限の緩和を決めた。「ワクチン・検査パッケージ制度」を活用し、イベントや飲食などで参加人数の制限を撤廃する。早ければ11月下旬から順次、実施する。
 感染防止と経済活動の両立を目指す「ウィズコロナ」への第一歩となる。国民が安心して日常生活に戻るには、流行が再来した場合に医療提供体制が確保されることが大前提だ。行動制限の緩和と一体的に、懸念される「第6波」に備えなければならない。
 ワクチン接種率は75%を超えた。初期の流行時と比べ、その効果で感染や重症化のリスクは一定下がっていよう。治療薬の開発や実用化も進む。状況の変化に応じて対応を見直すのは当然のことだ。
 長期にわたる行動制限の影響で飲食業や旅行業、イベント関連などは大きなダメージを受けた。人の流れが増えると感染のリスクが高まる懸念はあるものの、どこかで感染対策と経済活動の折り合いを付ける必要があろう。
 行動制限緩和の肝は、ワクチンの接種済証と検査の陰性証明だ。来場者がいずれかを提示することで、イベントや会食時の人数制限がなくなる。ワクチンの接種済証はコピーや撮影画像での代用も可能とし、6歳未満の未就学児は保護者同伴なら検査は不要とする。
 事業者側は都道府県に登録する。イベント主催者は感染防止計画を提出。飲食店は、感染対策の第三者認証取得で対象となる。知事が要請する場合などを除き、飲食店は酒類を提供できる。都道府県をまたいだ旅行も自粛要請の対象から外した。
 最大の課題は感染が再拡大した際の対応だろう。医療体制が逼迫(ひっぱく)した場合、パッケージの活用をやめ、強い行動制限を要請するとした。だが、その基準は曖昧さを残す。
 対策分科会の専門家は、緊急事態宣言などの発令が必要なレベルと判断すれば「継続運用や停止を検討することも必要」とする一方、内閣官房は「感染拡大の状況をみながら判断する」と説明している。
 これまでの流行でも新規感染者数が急増する中で、政府の対応が後手に回る場面が度々見られた。適切な時期に判断できるか、政治の責任は極めて重い。
 政府は、感染状況を評価する指標を見直し、従来の新規感染者数よりも医療の逼迫度を重視する方針に転換した。第6波に向け、自宅で使える飲み薬や、第5波のピーク時より3割増の病床を確保する方針を示している。
 そうした備えを行動制限の緩和と並行して、目に見える形で整えられるかどうか。国民の安心感に大きく関わってこよう。「医療難民」を再び発生させてはならない。
 欧州などではワクチン接種率が7~8割でも行動制限の緩和以降、感染が再拡大している。油断せずマスクの着用や「密」の回避など、感染防止の基本を改めて徹底したい。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月