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2021.11.16 08:00

【COP26閉幕】「脱炭素」への一里塚に

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 地球温暖化対策を話し合う国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、産業革命からの気温上昇幅を「1・5度に抑えるための努力を追求する」などとする成果文書を採択して閉幕した。
 国際枠組み「パリ協定」の努力目標1・5度を目指す姿勢を鮮明にしたことは一歩前進と言えよう。だが各国が温室効果ガスの排出量削減目標を達成した場合でも、1・5度の抑制にはほど遠い現実がある。COP26を一里塚として、さらに対策の上積みを図る必要がある。
 2015年に採択されたパリ協定は気温上昇幅を2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。COP26では、国際社会がこの目標の実効性を担保する対策を打ち出せるかどうかが問われた。
 科学者は1・5度に抑制するには50年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロに、30年時点では10年比で45%削減する必要があるとする。ただ、COP26で追加された削減目標を加えても、国連の最新分析では、30年の排出量はむしろ13・7%増加するという。
 今回、排出量世界3位のインドが「70年までの排出量実質ゼロ」を表明し、主要な排出国の削減目標が出そろった。成果の一つである一方、科学が求める「50年に実質ゼロ」で国際社会が一致することはできなかった。
 発展途上国にとって、厳しい削減目標は経済成長を図る上で足かせになりかねない。温室ガスを大量に排出しながら発展した先進国に削減を迫られることへの反発もあろう。その意識の溝を埋めない限り、目標実現はおぼつかない。
 しかし、先進国が途上国へ20年まで年間1千億ドル(約11兆円)を支援する目標は達成されなかった。「先進国対発展途上国」という構図をどう解消するかは、引き続き課題として残ったと言わざるを得ない。
 具体策でも各国の温度差は否めなかった。強い温室効果があるメタンの排出量削減や、温室ガスの吸収源となる森林保全に関する国際枠組みができたものの、参加は一部の国にとどまった。
 COP26で焦点となった石炭火力発電の扱いも同様だ。成果文書をまとめる交渉の最終盤で、「段階的廃止」から「段階的削減」へと表現が弱まった。
 こうした課題に、日本は率先して対応する姿勢を示せなかった。「30年度に13年度比46%削減」の目標を示しつつ、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力を継続利用する姿勢は、不名誉な「化石賞」に選ばれるなど批判された。「脱炭素」に向けた戦略の練り直しが求められる。
 世界各地で豪雨や熱波といった気象災害が頻発する中、COP26は多くの課題を浮き彫りにした。
 成果文書は対策の不十分さを踏まえ、各国に22年末までに30年の削減目標を再検討するよう求めている。地球温暖化は待ってくれない。国際社会は改めて、脱炭素への決意と知恵を試されている。

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