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2021.11.08 08:00

【フェイスブック】利用者保護の責任果たせ

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 米巨大IT企業の一つで、会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックの運営会社「メタ」への批判が強まっている。
 元社員が米メディアと米証券取引委員会に内部文書を提供し、同社が利用者の保護よりも利益を優先していると告発。文書を基にした報道も相次ぎ、問題が拡大している。
 SNSを巡る経営倫理が厳しく問われている。同社は2018年に大規模な個人情報の流出問題も起こしている。社内体制や企業文化を抜本的に見直し、利用者保護の徹底が求められる。
 米国内での報道は今年9月、同社傘下の写真共有アプリ「インスタグラム」の問題から始まった。
 インスタグラムの利用で若者がより容姿を気にするようになり、摂食障害に陥りやすくなる―。同社経営陣がそうした危険性を示す調査結果を把握しながら、対策を怠ってきたことが明るみに出た。
 告発した元社員は米議会上院の公聴会に出席し、「経営陣はより安全にする方法を知っているのに必要な変更を行っていない」と訴えた。
 同社のザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「誤ったイメージを植え付けるものだ」と反論しているが、開発中だった子ども版インスタグラムは中断に追い込まれた。
 米議会や米連邦取引委員会は追及に乗り出した。議会内では「自社製品に中毒性があると知っていた」と、昔のたばこ産業になぞらえた非難も上がっているという。
 同社は、個人情報に基づいて広告を配信するビジネスモデルで巨額の利益を上げてきた。一方で、利用者の安全を軽視してきたとなれば、非倫理的と言われても致し方ない。
 主要メディアの報道も激しくなっている。同社は暴力的な投稿の拡散を防ぐ取り組みを20年の米大統領選前に導入したが、選挙後すぐに取りやめている。21年1月のトランプ前米大統領の支持者らによる米議会占拠につながったと報じられた。
 別の疑惑もある。ワシントン・ポストはザッカーバーグ氏がベトナム政府の要請に応じ、反体制派の投稿に対する検閲強化を容認したと伝えている。
 いずれも民主社会の根幹にかかわる問題である。同社グループのSNS利用者は世界で36億人に迫る。各国の世論や政治を動かす影響力も増している。サービス提供者の社会的責任は極めて重いと言える。
 同社は先月、社名を「フェイスブック」から「メタ」に変更した。仮想現実空間「メタバース」の開発に注力する姿勢を示したとするが、SNSサービスへの批判をかわす思惑もあろう。
 小手先のイメージ刷新ではなく、同社は批判を正面から受け止めるべきだ。SNSが健全な公共空間となるよう、適切に管理する責任がある。
 私たちはデジタル革命の過渡期にいる。社会でSNSの安全や倫理を広く議論し、問題点を整理していくことも欠かせない。

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