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2021.11.06 08:00

【米金融緩和縮小】混乱招かぬ出口戦略を

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 米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は、米国債などを大量に買い入れる量的金融緩和の縮小を決めた。
 新型コロナウイルス危機を受けた緊急措置として実施されてきた。米経済のV字回復を受けて、金融政策の正常化にかじを切る。
 事実上のゼロ金利政策を解除(利上げ)する本格的な検討にも入る。ドル資金に依存する新興国に影響が及ぶことも懸念される。世界経済の混乱を招かないような対応が求められている。
 量的緩和は、世の中に出回る資金を増やしてお金を借りやすくし、景気を刺激する政策だ。
 FRBは昨年3月、異例の大規模緩和を導入。一時は失業率などが戦後最悪の水準まで落ち込んだ米経済の下支えを図った。
 国による巨額の財政出動と、ワクチンの普及もあり、今年の春先から景気は力強く回復した。FRBの危機対応もあって、雇用情勢にも改善がみられ、平時の政策に戻す判断に至ったとみられる。
 米国をはじめ、世界的に「悪い物価上昇」が新たなリスクとして浮上している。半導体不足や原油価格の高騰など供給面の制約から物価上昇が加速しているのだ。
 このまま量的緩和を続ければ、景気を過熱させてインフレも招きかねない。FRBの縮小判断を後押しする要因ともなった。
 緩和縮小は段階的に行う計画だ。今月から米国債などの購入額を毎月計150億ドル(約1兆7千億円)ずつ減らし、来年6月にも購入を終わらせる。
 ゼロ金利政策については、物価高に与える影響が不透明なため維持を決めた。解除の時期は来年半ば以降が有力視されているが、タイミングを慎重に見極める必要がある。
 米国の金利上昇とそれに伴うドル高は、新興国の通貨安と資金流出につながりかねない。新興国経済は依然厳しく、物価高が追い打ちをかけている。さらなる打撃を与えない配慮が欠かせない。
 FRBのパウエル議長は利上げには「辛抱強く」臨むと強調した一方で、必要だと判断した時は「ちゅうちょしない」とも語った。
 コロナ危機からの「出口」を目指す姿勢が明確である。日本の遅れがちな対応とは対照的と言えよう。
 日本はコロナ禍前から大規模な量的緩和に踏み切っている。しかし力強い景気回復には程遠く、物価上昇目標の2%は達成できていない。
 日銀の黒田東彦総裁は「欧米と日本の状況は少し異なる」と述べ、今後も続ける考えを示している。
 日本の量的緩和は株高を演出したほか、景気の底入れに一定の効果があったろう。ただ、長期化という「ぬるま湯」状態で企業が緊張感を失い、成長鈍化につながったとも指摘される。日本経済の実力を取り戻す政策が急がれる。
 今回の緩和縮小を見越してドル高円安傾向が強まっている。日本企業には早急な対応が求められている。

高知のニュース 社説

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