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2021.11.03 08:00

【京王線乗客刺傷】鉄道の安全向上策を探れ

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 鉄道の乗客を無差別に襲う事件がまた発生した。東京都調布市を走行中の京王線特急で乗客が刺傷され、殺人未遂容疑で住所不定の男が逮捕された。
 8月には小田急線で乗客刺傷事件が起きている。容疑者はこの事件を参考にしたという内容の供述をしているようだ。
 安全運行は鉄道の責務であり課題だ。防犯対策も当然含まれる。鉄道の安全を高めるために強化していかなければならない。そのためにまず詳しい犯行動機の解明が不可欠だ。再発防止へ全力を挙げて取り組むことが求められる。
 鉄道が現場となる凶行が相次いでいる。2018年には、神奈川県を走行中の東海道新幹線の車内で3人が死傷される事件が起きている。
 防犯対策は急務だ。防犯カメラの増設や人工知能(AI)を含む最新技術の活用が進められている。
 ボディースキャナーなどの実証実験も行われてきた。だが、所持品検査を全ての駅に導入することは検査場所の確保もあり現実的ではない。鉄道は多くの乗客を運ぶ上、すぐ乗れる利便性も失われてしまう。影響を回避しつつ、実効性を高める方策を探る必要がある。
 調べでは、容疑者は先頭から8両目の車両で会社員を刺した。6両目の車両に移り、可燃性の高い液体をまいて放火し、ほかの乗客も煙を吸うなどけがをした。
 乗客の写した写真や映像は、車内を逃げ惑う緊迫した様子を伝える。また、緊急停車した車両のドアやホームドアは閉まったままで、車両の窓からホームドアを乗り越えて逃げ出したことを記録している。
 車両はホームドアからずれた位置に停車したため、定位置に車両を動かそうとした。しかし、乗客が非常用ドアコックを操作して一部のドアが開けられていたため動かせなかった。このため乗客が線路に転落することを危惧してドアを開けなかったという。
 緊急事態には難しい判断を迫られる。転落を心配したため、駅係員らは窓からの脱出を手助けしたと説明する。これを不十分な対応と一蹴することはできないだろう。今事案を検証し、さまざまな想定に基づく訓練を充実させていくしかない。
 人の判断にとどまらない。窓からの脱出を余儀なくされたのは、ドアが開いたままでは車両が動かないようにしていることも影響した。この危険回避の設計を否定はできない。どういう機能が求められるのか研究を重ねていくことが大切だ。
 何より、こうした犯行が続く背景を探ることが重要だ。
 容疑者は「仕事で失敗した。友人関係がうまくいかなかった」「人を殺して死刑になりたかった」と供述しているという。
 身勝手な犯行であり、発言の背景は不明だが、孤立感を強めて追い詰められた様子はうかがえる。新型コロナウイルス禍は孤立化も指摘される。動機の解明を通して犯行防止策を強めたい。

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