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2021.11.02 08:00

【審判のあと】問われる「信頼と共感」

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 新型コロナウイルス感染症と対峙(たいじ)する中で初めての大型国政選挙となった衆院選はきのう、全465議席が確定した。
 自民党は公示前から17減らしたものの、259議席で単独過半数を確保。公明党と合わせると291議席で、国会運営を主導できる絶対安定多数(261)を上回った。議席数をみれば、与党の勝利は間違いない。
 だが、有権者が自公政権を積極的に信任したかといえば疑問が残る。コロナ禍という命と健康に直結する課題を抱えながら、投票率は高まらず、戦後3番目に低い水準だった。国民の信頼をどう高めていくか。各党は根本的な課題と真剣に向き合う必要がある。
 安倍、菅政権と9年近く続いた「自民1強」政治は終盤、コロナ禍への対応が後手に回り、批判にさらされた。内閣支持率の低迷から、直前の自民党総裁選で「選挙の顔」は岸田文雄首相に代わった。
 衆院選でもコロナ対策は主要な争点だったが、この戦略は結果として政府への批判を和らげる効果があったといえよう。流行が下火の時期だったことも、与党に有利に働いたのではないか。
 コロナ対策のほか、経済対策でも野党との対立軸は曖昧だった。討論会で見られた「成長が先か、分配が先か」といった議論も抽象論の域を出なかった。岸田首相が唱える「新しい資本主義」の具体像は論戦を経ても見えないままだ。
 1強政治の「負の遺産」についても、岸田首相は説明を避けた感がある。森友問題や参院選買収事件の再調査にも否定的だ。
 だが、有権者は「政治とカネ」問題を見過ごさなかった。金銭授受問題が再燃した甘利明幹事長は比例で復活当選したものの、小選挙区で立憲民主党の新人に苦杯をなめた。
 それでも、与党は事前予想を超える議席を得た。コロナ感染症は流行の「第6波」も懸念される。有権者は現実的な対応を与党の安定感に託したとみることもできよう。
 野党は明暗を分けた。日本維新の会が4倍近い41議席に躍進した一方、野党共闘の5党はいずれも伸び悩んだ。立憲は公示前を下回る96議席、共産党も10議席に減らした。
 野党共闘は、与党候補との接戦が増えるなど一定の効果はみられた。だが勝ち抜くことはできず、比例でも伸びを欠いた。
 共通政策で合意したとはいえ、安全保障など各党の基本的な政策の違いは大きい。批判した与党ばかりでなく、有権者も戸惑ったに違いない。政策の独自性がぼやけ、与党に対する反対票の受け皿になりきれなかったと言わざるを得まい。風に頼らない戦略が求められる。
 特別国会は10日に召集される。首相指名選挙を経て、第2次岸田内閣が発足する見通しだが、コロナ対策や経済対策など喫緊の課題が山積している。早急に議論の場を設けるべきだろう。岸田首相が強調した「信頼と共感」には丁寧な国会運営と国民への十分な説明が求められる。

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