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2021.10.29 08:00

【2021衆院選 地方活性化】地域の衰退に歯止めを

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 稲作が行われず、荒廃が進む「千枚田」―。高岡郡梼原町神在居(かんざいこ)にある棚田の約8割が耕作放棄地となっている。今年7月の本紙記事で報じられた。
 全国に広がった「棚田オーナー制度」発祥の地。保全の重要性や景観美を発信しようと、1995年に第1回全国棚田サミットも開かれた。
 しかし、そのような集落でも高齢化が進み、守り継いできた棚田の維持が難しくなっている。
 総務省によると、四国の過疎地域では、住民の半数以上が65歳以上の集落は40%超、75歳以上も10%を超える。10年以内に消滅が危惧される集落は約730カ所に上る。伝統や文化も途絶えそうな地方の危機的状況がある。
 表裏一体の関係にあるのが、地方から人口が流入し続ける東京の一極集中だ。
 これを是正しようと、2014年に政府は「地方創生」を掲げた。地方移住への支援や税制優遇による企業誘致を図ったが、目立った成果は上がっていない。「国が模範を示す」とした中央省庁の地方移転も、文化庁の京都移転にとどまった。
 実効性のある是正策が求められているが、今回の衆院選では地方活性化は主要な争点になっていない。新型コロナウイルス対策や経済対策の議論に埋没している感がある。
 与党側は地方のデジタル化推進と結び付けて、テレワークを普及させ「転職なき移住」を進める政策などを打ち出している。
 野党側も東京一極集中の是正を訴えながら、通信環境の整備や自然エネルギーによる地域活性化を主張している。
 対立軸は見えづらいが、共通して意識しているのは、新型コロナの感染拡大をきっかけにした「地方回帰」の流れだろう。東京の過密さをリスクと捉える人が増え、地方移住に関心が高まっているとされる。
 「地方回帰」はどれほどの流れなのだろう。東京では昨夏から8カ月連続で転入を転出が上回ったが、首都圏3県への人口流入は加速している。移住先は東京近郊という傾向の強いことがうかがえる。
 本県のように遠い地方まで流れを引き寄せられるのか。政府が自治体任せの移住促進策に旗を振るだけでは、十分な効果は上がらない。掛け声倒れに終わらないよう、具体的な政策を示し、地方を継続的に支援することが欠かせない。
 いびつな一極集中の弊害も指摘されている。例えば、東京では首都直下地震が発生すれば、より甚大な被害につながりかねない。
 一方、地方では高齢化が進んで住民がいなくなり、日常的に管理されなくなった広大な土地が荒廃する恐れもある。
 人口減少社会で持続可能な仕組みをどう実現するのか。地方政策はこの問いにもつながっている。日本の将来像を描きながら、長期的な視野で議論していく必要がある。

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