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2021.10.27 08:00

【2021衆院選 食の安全保障】供給リスクと向き合って

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 新型コロナウイルス感染症は食料供給にも影響を及ぼした。供給リスクはさらに、地球温暖化や自然災害の激甚化でも懸念されている。
 コロナ対策や脱炭素化は食の安全保障の観点からも見逃せない。危険性を軽減化するための検討を重ね、多層的な対応策を進める必要性が高まっている。
 日本のカロリーベースの食料自給率は長期にわたり低下傾向にある。2020年度は37%で過去最低の水準となった。30年度に45%とする目標を設定しているが、非現実的との批判さえある状況だ。
 これまでの施策の検証が欠かせない。一方、生産額ベースでは自給率の上昇も見られる。農業の活力向上につながる有効な取り組みを探り続ける必要がある。
 20年度版の農業白書は、食料供給リスクを取り上げている。コロナの影響拡大で一部の食品が品薄に陥った。外食の持ち帰り需要や自宅での調理が増え、食事の在り方が変わったことも要因と指摘した。
 今秋にはコロナの影響で、冷凍鶏肉加工品の生産が原産地のタイ工場で滞り、日本でも唐揚げやグリルチキンの販売を休止する事例があった。リスクは自然災害や家畜伝染病にとどまらない。食料を増産する体制を構築し、備蓄を確保する重要性が改めて認識された。
 白書によると、コロナで19カ国が小麦など農産物、食料の輸出規制に踏み切ったという。安定的な供給を維持するため、国際市場の透明性確保が課題となる。各国との連携強化はもちろん、国内の生産体制の強化が求められる。
 近年は国内外で大規模な自然災害が相次ぎ、洪水や火災が暮らしや生産に多大な負荷を与えている。
 世界で起きる異常気象は人間の活動が影響していると、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書は断定した。温暖化ペースは従来分析より10年早まっている。気温上昇で熱波や大雨の発生頻度は増大していくと予測する。
 気候変動は農業生産や漁獲高にも大きく影響する。国内はもとより、海外での生産低下や貿易停滞の可能性も想定しなければならない。
 脱炭素化は国際社会の課題だ。日本は50年の温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指し、30年度には13年度比46%の削減を表明した。これを背景に、各党は削減比率や再生可能エネルギーへの転換割合を主張し、原発の在り方を論じている。
 環境変化などをにらんだ食料の生産基盤の強化も重要となる。生産性を高め、所得の向上や担い手の育成を着実に進める必要がある。
 県産食料品の20年の輸出額は1割強増加した。コロナの渡航制限で販促活動が難しくなる中、いち早く経済活動を再開した中国向けが伸びたという。多彩な取り組みで生産の足腰を強くしたい。そのための方策をどう構築し、展開していくかが問われている。

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