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2021.10.13 08:00

【代表質問】岸田政権の軸足はどこに

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 岸田内閣の発足から衆院選へと向かう慌ただしい政治日程の中で、野党側も主張を強める。岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党代表質問は、議論が深まらないのは仕方ないのだろうか。本格論戦の見送りで国会の機能も問われてしまう。
 首相は新型コロナウイルス対策を喫緊かつ最優先の課題と位置付ける。菅政権のコロナ対応への不満が支持離れを引き起こす要因となり、野党は政府対応の責任を追及している。首相は今後、徹底的に安心確保に取り組むとする以上、説明と対話が欠かせないのは明らかだろう。
 一連のコロナ対応について、首相は病床が十分に稼働しなかったことを反省点に挙げた。感染再拡大に備え、さまざまな事態を想定した対策の全体像を早急に示すという。医療体制の拡充は不可欠だ。衆院選での主要論点だけに、課題を明確にして対応する必要がある。
 首相は衆院選日程を決めたことを、コロナの追加経済対策を速やかに実行するためと説明した。追加策も具体的な方策が明らかにならないと、衆院選を急ぐための口実と見られ、ばらまき批判を受けかねない。財政への目配りが欠かせないのは当然だ。これまでの効果と規模を検証することが基本となる。
 経済政策では、首相は「成長と分配の好循環」を掲げている。適正な分配を出発点とするべきだという野党側の主張に、まず成長を目指すことが重要だと答えた。
 所信表明演説で首相は、健全な民主主義の中核である中間層を守る新しい資本主義を日本でも実現しようと訴えた。新自由主義的な政策は深刻な分断を生んだという弊害が指摘されているとも言及した。
 しかし、安倍・菅政権での成長重視の経済政策「アベノミクス」からの転換を意図しているのではないようだ。分配機能の強化に取り組む「アベノミクスを基礎とした新しい概念」と説明している。その具体策を示さないと戸惑いを生む。
 分配の財源を巡っては、首相は株式売却益をはじめとする金融所得への増税を先送りする考えを表明した。いったんは意欲を示したが、株価の下落傾向などを配慮したようだ。主張が変わったことをただされた首相は、選択肢の一つであり優先順位を考慮しての判断だと強調した。しかし、分かりにくい対応だ。
 「政治とカネ」問題もくすぶり続けている。だが、説明責任の在り方は政治家自身が判断するべきだと述べるなど、積極的に取り組もうとする気配はうかがえない。
 所信表明演説はこの問題に触れなかった。信頼と共感が得られる政治が必要だとは述べており、考え方は示したとする。そうした曖昧な対応のままで、信頼と共感の政治に近づくとは思えない。
 森友学園を巡る公文書改ざん問題の再調査を否定し、日本学術会議会員候補の拒否問題も言及を避けた。安倍・菅政権とは何が違うのか。岸田色が定まらなければ、衆院選への議論は活発化しない。

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