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2021.10.01 08:00

【買収事件の原資】説明責任を果たしてない

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 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件について、自民党本部は記者会見で、河井案里氏の陣営に投入した1億5千万円は買収原資ではなかったと説明した。
 党総裁選のさなか、衆院選を直前に控えた記者会見には、党としての関与を否定して問題の幕引きを図りたいとの思惑があるだろう。
 だが、説明は河井氏側が提出した資料に基づいて行われ、裏付ける資料も独自調査もなかった。説得力に乏しいと言わざるを得ない。離党したとはいえ所属議員が招いた重大な不祥事に対し、公党としての責任を果たしたとは言いがたい。
 買収事件は案里氏当選を目的に、夫の克行元法相が差配する形で地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。案里氏は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決が確定。克行元法相は一審の東京地裁で懲役3年、追徴金130万円の実刑判決を受け、控訴している。
 選挙前に河井陣営に支給された1億5千万円のうち1億2千万円は政党助成金で、税金を含む資金が買収に使われたかが最大のポイントだ。党本部は検察に押収された資料が「返還され次第、党の公認会計士が監査を行う」(菅義偉首相)と繰り返し説明を避けてきた。
 遅まきながら開かれた党本部の記者会見だが、国民の疑問を解消するにはほど遠い内容だった。柴山昌彦幹事長代理の説明では、資金の大半を占める約1億900万円は機関紙の発行や宣伝事業に、残りは人件費などに使われたという。
 だが、説明の根拠となる資料は河井氏側が作成したものだった。自身の公判で買収原資は「手持ち資金」とした、克行元法相の主張そのものといってよい。
 党独自の調査をすることもなく、客観性は極めて乏しい。お金に色は付いていないとも言われる。党本部からの資金で宣伝費を充当できたことで、買収原資を確保した可能性もあるだろう。
 国民の疑念は使途だけではない。誰がなぜ、同じ選挙区で落選した同党候補の10倍にもなる巨額資金を河井陣営に提供し、党本部でどう決裁したのか。そうした「不公平な資金投入が事件の温床」とする声が党内にもある。
 それにもかかわらず、記者会見には1億5千万円の支出を決裁した二階俊博幹事長が出席すらしていない。党として、前代未聞の規模で買収事件を招いた責任を直視しているようにはみえない。自民党が抱える不透明さが解消されない限り、国民は納得できないだろう。
 新総裁の岸田文雄氏を含め、総裁選では4候補とも「政治とカネ」問題や森友学園を巡る公文書改ざん問題に関し、党が説明責任を果たす必要があると口をそろえた。しかし議論が活発さを欠いたことは否めず、説明責任への向き合い方には疑問符が付いたままだ。
 まもなく衆院選を迎える。民主主義の健全さをどう高めるか。私たち有権者の意識も問われている。

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