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2021.07.29 08:00

【エネルギー計画】原発維持は容認できぬ

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 中長期的な政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」の素案を経済産業省が示した。意見公募を経て10月までに閣議決定する。
 温室効果ガスの排出量削減を迫られる現状を踏まえ「脱炭素電源」を拡大する姿勢を強調している。地球温暖化対策の世界的な潮流の中で当然の方向性と言える。
 ただ、原発の将来像が明確になっておらず、脱炭素への具体的な道筋は漠然とした印象が拭えない。原発の行方を曖昧にしたままのエネルギー政策では、東京電力福島第1原発事故を経験した国民の納得は得られないだろう。
 今回の改定は、昨年10月に菅義偉首相が打ち出した2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標を盛り込む。30年度に13年度比で46%削減するという「国際公約」の根拠を示す意味合いもある。
 太陽光や水力など再生可能エネルギーは「主力電源化を徹底」するとうたい、30年度の電源構成目標は現行の「22~24%程度」から「36~38%程度」へと大幅に引き上げる。再生エネに原子力、水素とアンモニアによる発電を含めた「脱炭素電源」全体で59%をまかなうとした。
 問題は、現行目標の「20~22%程度」を据え置いた原発だ。その位置付けは明らかな矛盾を伴う。
 原発事故の反省にたって「可能な限り原発依存度を低減する」という従来方針を維持する一方、低コストで安定供給が可能な「ベースロード電源」との位置付けも踏襲した。さらに「必要な規模を持続的に活用する」との表現も書き加えた。
 目標の構成比を実現するには約30基の原発を8割の稼働率で動かす必要があるとされる。現状で再稼働しているのは33基のうち10基にすぎない。19年度の発電実績も6%程度だ。事実上、原発再拡大を掲げたに等しいといえる。
 ところが、素案では新増設やリプレース(建て替え)といった具体策に関する記述はない。意図的に国民への説明を避けているとみられても仕方がないのではないか。
 そもそも、「脱炭素」の流れと原発の安全性に対する国民の懸念は別の問題だろう。
 原発事故から10年を経ても、日本世論調査会の調査では「今すぐ」と「将来的に」を合わせ、原発ゼロを求める声が合計で76%に及ぶ。脱炭素と脱原発を並行して進めることは決して不可能ではあるまい。再生エネ拡大を徹底するドイツなどの例もある。政府には国民と向き合う姿勢が求められる。
 温室効果ガス削減の国際公約は現状を踏まえれば、実現へのハードルは高いと言わざるを得ない。再生エネ拡大には送電網の整備に加え、発電施設の拡大も急がなければならない。大手電力会社以外にも、広く民間企業の投資や国民の協力が必要になるはずだ。
 政府は再生エネ拡大へ、今回の改定をより明確で強いメッセージとすることで、対策を加速化しなければならない。

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