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2021.09.07 08:00

小社会 内橋さんの訃報

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12歳のとき、地元神戸が受けた大空襲で目の当たりにした惨状が「生の原点」だという。弱者や生活者への真摯(しんし)なまなざし。神戸新聞記者としての若き日も、零細業者の思いを聞き続けた。

 経済評論家、内橋克人さんが亡くなった。17年前、小泉構造改革への疑問から高知県独立論まで行き着いた本紙連載「時の方舟(はこぶね)」。まず取材したのは内橋さんだった。夜の東京で、時間も気にせず語ってくれた思い出がある。

 市場万能主義に異を唱え、人を大事にする「共生経済」を説き続けた。あらゆる壁をなくし、労働力や「公共」まで商品化するとどうなるか。「強い者はより強く、弱い者はより弱く。強者と弱者の格差が拡大します」。

 市場原理主義の下では、市場にのらない非効率なものがお荷物になる。内橋さんにいわせれば、小泉政権内から聞こえる「三悪人」は老人、農業、地方だった。「私は、日本はこの三つから成っていると思っている」。

 あれから17年。政治は地方創生だ、人生100年時代だと猫の目のように看板政策を変えてきた。しかし、これからの高齢者は「老後は2千万円が必要」と自助を求められ、農業は疲弊し、地方の人口流出も止まらない。非正規労働者の雇用が真っ先に切られているコロナ禍も、貧困と格差の拡大をあぶり出す。

 次の為政者は、弱者にも「三悪人」にも光が見える手を打つ人かどうか。内橋さんの訃報にそんなことを考えた。

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