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2021.08.22 08:00

【子どもの貧困】成長の下支え策の強化を

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近年、子どもたちに無料や低額で食事を提供する「子ども食堂」の広がりなどで、「食の貧困」の問題が知られるようになった。
 日本世論調査会が今月公表した全国調査で、子どもの食の貧困が深刻だと思う人は81%に達していることが分かった。
 新型コロナウイルス感染拡大による雇用悪化で、生活に困窮する子育て世帯が増えている。
 子どもがおなかいっぱい食べることができなかったり、栄養バランスの良い食事をとれなかったりする実態がある。健全な成長を保障する対策が急務だ。
 困窮子育て世帯を対象として、支援団体が今夏行った調査では、コロナ感染拡大前と比べ「食事の量が減った」は47%、「食事の回数が減った」も23%に上った。
 給食がない夏休み中の食事に不安を抱えている家庭も87%に達した。貧困は家庭の外に実態が見えにくいが、日本社会にこうした現実があることを広く認識する必要がある。
 特にひとり親世帯の困窮が問題になっている。コロナ禍は「女性不況」とも呼ばれている。サービス業を中心に女性の非正規労働者が深刻な打撃を受けているからだ。母親の失業や休業によって収入が激減し、とりわけ母子世帯の生活が苦しくなっている。
 もともと、母子家庭など、ひとり親世帯の「子どもの貧困率」は2018年時点で48・1%に上る。半数近くの子どもが中間的な可処分所得の半分(127万円)を下回る世帯で生活している状況がある。
 そこにコロナ禍が直撃し、さらに感染拡大が長引いていることで追い詰められている。「自助」だけで解決できない構造的な問題がある。子どものいる困窮世帯への支援策を強化しなければならない。
 全国で「共助」の取り組みとして、子ども食堂をはじめ、困窮者に食べ物を配る「フードバンク」などの民間活動が広がっている。
 県内でも子ども食堂は80カ所以上に増え、そのネットワーク化を目指し「こうち食支援ネット」も発足。地域で子どもの食を支えようとする取り組みの重要性は増している。
 だが、民間でできる「共助」には限界もある。住む地域や状況にかかわらず、誰でも支援を受けられることが肝心だ。貧困対策はやはり国や自治体による「公助」が欠かせない。
 コロナ禍で困窮するひとり親世帯への国の給付金は昨年6月以降、計3回出されている。感染拡大は長引いており、今後も給付金を出して家計を下支えする支援が必要だろう。
 コロナ後も中長期的な対策が求められる。最低賃金を保障し収入を上げ、不足分を児童手当などで現金給付するなど、所得の再分配を機能させて経済格差の解消を図りたい。
 コロナ禍は、日本社会の貧困問題を顕在化させたと言われる。中でも、困窮世帯が食べることにも事欠く状況は早急に打開すべきだ。子どもが食に満足し、安心して生活できるような支援を確実に届けたい。

高知のニュース 社説

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