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2021.07.04 08:00

【三菱電機不正】企業倫理が問われる

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 「不祥事のデパート企業になっている」。株主総会で株主がそう嘆くのも無理はないほど、三菱電機では近年、不正検査や品質問題などが立て続けに発覚してきた。
 さらに、新たな不正が明らかになった。鉄道車両向けの空調機器、ドアの開閉やブレーキに使う空気圧縮機で、長崎製作所が長期にわたって検査データを偽装していた。
 「安全性に問題はない」としているが、組織ぐるみで不正検査に手を染めていた。企業倫理が厳しく問われよう。
 三菱電機は家電から防衛関連まで事業領域が幅広く、鉄道車両向けの機器も国内で高いシェアを誇っている。JR、私鉄の各社も製品を載せた車両を数多く保有しているだけに影響が広がりかねない。
 鉄道向けの製品は、制御機能や消費電力などの検査条件が契約で指定されているという。
 ところが、三菱電機は空調機器で指定された検査を行わず、偽装した検査結果を顧客に提出していた。偽装のために、架空データを自動で作成する独自のプログラムも組んでいた。不正検査は少なくとも35年以上に及ぶとみられ、常態化していた可能性が否めない。
 空気圧縮機でも以前の機種から変更していない部分の検査を省いていた。不正検査の疑いがある空調機器の出荷数は約8万4600台、空気圧縮機は約1500台に上る。
 製品の品質は正しい検査データがあって初めて保証される。多くの命を乗せる鉄道車両の一端を担う責任感は希薄と言わざるを得ない。
 三菱電機では、グループ内で毎年のように品質に関する不祥事が発覚し、パワハラによる従業員の自殺や自衛隊関連の情報流出も問題になった。
 再発防止への取り組みがなかったわけではない。2018年に子会社が品質検査を行わず、仕様に合わないゴム製品を出荷していた問題を受け、国内の全事業所と子会社121社を対象に「全社再点検」を行った。
 だが結果からいって、同様の不正を見過ごしていたことになる。再点検で浮き彫りになったずさんさは、かえって信頼回復に向けた本気度を疑わせる。
 今回の不正検査問題でも対応が鈍かった。社内調査で6月中旬に事態を把握したにもかかわらず、月末の株主総会で企業体質を問う株主に報告さえしなかった。総会終了後になって不正は認めたものの、当初は記者会見も開かず、簡単な説明資料を出すにとどまった。
 自社に都合の悪い情報の開示に消極的な姿勢は以前から指摘されていた。それが自浄作用を鈍らせ、不祥事が後を絶たない状況に陥っているように映る。
 杉山武史社長は引責辞任する意向を表明したが、問われているのは企業体質そのものだ。外部の弁護士を含む調査委員会でグループ内の不正を点検する方針を示したが、今度こそうみを出し切れるか。信頼回復の成否はそこにかかっている。

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