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2021.06.01 08:41

高知市鏡の鉱山、搬出ダンプに住民反発 安全確保を疑問視

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ダンプによる搬出計画などに不安が噴出した住民向け説明会(3月、高知市鏡草峰)


 四国鉱発(南国市白木谷)が進める高知市鏡地域での石灰鉱山計画が、「前提」としてきた県道拡幅の要望が実現せず立ち止まることになった。生活道路を頻繁に大型ダンプが走る構想に対しても反発は大きく、見直しの判断に傾いたとみられる。

 同社は昨年10月から事業の地元説明会を開いてきた。地元住民らが大きな不安を感じたのが、石灰搬出に使われる22トンダンプ(幅約2.5メートル、全長約9.1メートル)が地元の県道を通る頻度だった。

1.4分に1回
 資料によると、当面の目標とする年間採掘量40万トンなら、1日に延べ116往復で2.1分に1回走行。最終目標の60万トンなら174往復で1.4分に1回、静かな山里をダンプが走り抜けることになる。

 地元説明会は当初非公開だったが、今年3月に開かれた草峰地区の説明会は住民の意向で公開に。会場では、計画への反対意見が相次いだ。

 ある子育て中の女性は「児童の通学が心配。安全をどう保障するのか」と訴え、別の男性は「生活道と企業が使う搬出路が共通というのは間違い。ルートを別にすべきだ」と抗議した。生活環境の変化を懸念する高齢者からは「平穏な生活こそ子孫に残せる財産。(この生活を)続けさせてほしい」と悲痛な声も漏れた。

おんぶに抱っこ
 巨額の公費を要する県道拡幅を前提にした事業の在り方にも懐疑的な見方があった。

 今年に入り、鏡地域の住民3人が代表となり、鉱山問題を考える「鏡川を守る会」が発足。勉強会で講師を務めた近藤恭典弁護士は「石灰価格は1トン千円ほど。年40万トン掘って売り上げ4億円の企業が、130億円の道路を造れと要求している」と批判的に解説し、「経済活動の自由は人に不当な迷惑を掛けない範囲の自由であって、何でもやっていいということではない」と指摘した。

 県内の別の鉱山では専用道の敷設やベルトコンベヤーでの搬出が採用されている。3月の説明会では、住民が同じ手法を採る可能性を質問。同社の竹内正倫取締役は「ベルトコンベヤーも考えたが、費用(採算)が合わない。地形的にも難しいのでトラックが有力だ」と答えた。

 これに対し、住民からは「(公費に)おんぶに抱っこでなく、企業側の努力も必要ではないか」「私たちが払う税金に乗っかった事業だ」と厳しい意見が飛んだ。

共通の願い
 高知県土地基本条例などに基づき、同社は鏡地域の全地区への説明を行う。今年3月までの計6回で、同社は、石灰は高知県が誇る鉱山資源であり、各種製造業に欠かせない物質だとして事業の意義を強調してきた。

 県生コンクリート協同組合連合会によると、昨年9月現在で、県内約40の生コン工場のうち18工場が同社の白木谷鉱山の石灰を使用。同社は、鏡鉱山操業後の18年で54人を新規雇用し、200年間で117億円の税収効果があると見込む。

 「県道拡幅は地域全体と私たちの共通の願い」「次世代が地元に残れる雇用を」。こう地元に訴える同社だが、交通問題などの解決策を示さない限り、「共通の願い」になることは難しい状況だ。(八田大輔)

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