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2021.05.15 08:39

[音土景] 音感じる土佐の風景(5)郷愁誘う河鹿笛【動画】

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 川のせせらぎに乗って、涼しげな、美しい旋律が運ばれてきた。

 高知市土佐山高川の「鏡川源流憩いの広場」前。声の主を探すが、なかなか見当たらない。水辺に降りて音のする方向にじっと目を凝らすと…。

 水面から少し頭を出した石の上に、小さなカジカガエルが座っていた。のどをぷくっと膨らませ、懸命に歌っている。でっぷりした面構えに似合わない、美しい歌声だ。

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 カジカガエルは、本州、四国、九州などの清流に生息するアオガエルの仲間。体長は4~8センチほどで、灰褐色。流されないよう指先には大きな吸盤がある。水辺にいるのは繁殖期とオタマジャクシの時だけで、それ以外は森で暮らす。

 横倉山自然の森博物館(高岡郡越知町)の谷地森秀二学芸員によると、「県内には東から西まで、驚くほど広範囲で生息しています」。川の透明度に加え、川と森を行き来できる環境が保たれているためという。

 美声で鳴くのはオスだけで、一回り大きなメスを誘う。鳴き声は、ケロッとした顔のアマガエルや、突然現れてゲゲッと驚かされるトノサマガエルなどとは異なる。例えるなら、野鳥のさえずりやコオロギの羽音か。高く澄んだ音はちょっとカエルとは思えない。

 鹿の鳴き声に似ているとされ、古くから「河鹿」と書きならわされる。その美声から、飼育する人もいたほど。夏の季語になっており、俳句などでは風流に「河鹿笛」とも詠まれる。

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 日中の「―憩いの広場」。人々がバーベキューをしたり、川遊びをしたりしているすぐ近くで、カジカガエルが鳴いている。年配の女性は「心が落ち着きます」と、うっとり耳を傾けていた。

 日暮れ時に、再び訪れた。あたりは薄暗く、声はすれども姿は見えない。せかすようなリズムが、どこか懐かしさも感じさせる。

 カジカガエルの愛の歌。ほんのり、切ない色を帯びている。(森本敦士)

高知のニュース 高知市 音土景

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