2024年 04月30日(火)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2021.04.29 08:00

【40年超原発運転】原則の形骸化を危惧する

SHARE

 原発の運転期間の延長はあくまで例外だ。それを常態化させるのではないかと危惧する。
 運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働に、福井県の杉本達治知事が同意を表明した。
 立地する美浜町と高浜町は先に同意し、県議会も容認している。必要な地元同意手続きが完了した。
 東京電力福島第1原発の事故後、原発の運転期間を原則40年と定めてから、初めての延長運転となる。原子力規制委員会が認めれば最長で20年延長できる。しかし、それは本来、特例とすべきことだ。ルールを形骸化させてはならない。
 原発の過酷事故が招く被害を目の当たりにして、安全性への信頼は大きく揺らいだ。なかでも建設から長期間を経た原発には、想定外の劣化があるのではないかと疑念が膨らみ、再稼働への懸念は根強い。
 これに対し、関電は巨額を投入し、ケーブルの防火対策や、使用済み核燃料プールの補強や防潮堤の新設など大規模な安全対策工事を行ってきた。事故に備えて訓練を繰り返している。
 しかし、それで納得を得られたわけではない。例えば住民避難は、周辺自治体の多くが課題としている。茨城県の原発を巡り、水戸地裁は3月、運転差し止めを命じた。半径30キロ圏内の自治体に義務付けられている広域避難計画の策定が進んでいないことを指摘した。
 地震や津波の想定、建物の耐震性には問題ないとしている。それでも多層的な防災対策を求めたことは重く受け止める必要がある。
 政府は温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の実現を掲げる。菅義偉首相は2030年度の排出量の削減目標を、13年度比26%から引き上げて46%とした。
 見直しを進めている電源構成目標は、再生可能エネルギーをどれだけ積み上げるかが焦点となる。
 原子力は現行目標の2割程度を据え置く見通しとされる。19年度実績6・2%から大きく伸びる。何としても原発を温存して存在感を高めたいようだ。だが原発の新増設は難しい。このため40年ルールにとらわれずに既存原発を延命させなければ、実現は難しいと指摘されている。
 脱炭素を願う国民の思いは強い。しかし、原発再稼働とは一線を画していることを忘れてはならない。 
 国は知事に持続的に原発を活用する方針を示し、交付金を支払うなど地域振興策を提示したという。関電は、使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の県外候補地を23年末までに確定させると約束した。もちろんこうしたことですべての課題が解決したとはならない。
 地元手続きは完了したが、住民をはじめ国民の理解が進んでいるわけではない。東電福島第1原発での処理水の海洋放出が、地元の不安や反発が解消されないまま決まり、さらに混乱を大きくさせている。丁寧な説明で懸念と向き合うことが欠かせない。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月