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2021.04.26 08:00

【デジタル教科書】紙との二者択一ではなく

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 小中学校でデジタル教科書の普及が進められている。文部科学省の有識者会議は、小学校教科書が改定される2024年度の本格導入を求める中間まとめを公表した。
 学校教育にICT(情報通信技術)を活用することは時代の要請といえよう。利点は多い一方、教育格差を広げかねない側面もあり、視力などへの影響を懸念する声もある。
 紙かデジタルか。二者択一に走らず、それぞれの良さを組み合わせて学習効果を向上させたい。
 デジタル教科書とは、紙の教科書と同じ内容をタブレット端末などに取り込んだものだ。19年度から正式に使えるようになった。
 小中学生に1人1台の端末を配備する国の事業は20年度中にほぼ完了した。今月から全国の小中学校で本格的に活用されている。
 中間まとめでは、さまざまなメリットが挙げられている。デジタル教科書は画面への書き込みや消去、図や写真の拡大なども容易だ。
 例えば、算数で立体図形を展開させたり、英語の発音を確認したりできる。動画などのデジタル教材と連携させれば、学びの幅も広がる。
 音声読み上げやルビ振りの機能もあり、障害のある子どもや外国人が学びやすくなる利点もある。
 一方、中間まとめで示されず、議論しなければならない課題も残る。
 紙の教科書と同様に、国の無償制度の対象にするかどうかは結論が出ていない。現行のままだと、デジタル版の教科書や教材は自治体が費用を負担する。財政力によって購入に差も出ることも考えられる。
 家庭に持ち帰っての学習も想定されるが、端末を使うにはインターネットに接続しなければならない。通信環境が必要で、通信費もかかる。家計の状況が子どもの学びに影響する恐れがあり、教育格差を生みかねない。
 憲法で定められている「ひとしく教育を受ける権利」の保障に関わる課題として検討すべきである。
 紙の教科書との関係も整理が必要だ。中間まとめでは、デジタル教科書への全面切り替えや紙との併用など、導入パターンが五つ示された。
 先行してデジタル教科書を使っている学校現場からは、二者択一ではなく、子どもの特性などに応じて、紙と併用して使い分けていく必要性が指摘されている。
 文科省は21年度、デジタル教科書の使い勝手を調べるため全国の小中学校で大規模な実証事業を始める。
 小中学生の視力に関する調査も行う。スマートフォンなどデジタル機器の利用によって、子どもが近視になる割合が高まっているためだ。
 本格導入を進める上では、こうした調査から得た科学的なデータや知見を生かすことが欠かせない。
 加えて学校現場では、ICTの活用にたけた教職員が不足している。外部人材の登用や研修の拡充など、国は十分に支援する必要がある。
 新しい技術をうまく取り入れて、子どもたちの意欲を高め、習熟度に合わせた学びを目指したい。

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