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2021.04.25 08:00

【温室ガス削減】46%実現の道筋を明確に

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 日本の温室効果ガスの排出は、2030年度には13年度比で46%削減を目指す。さらに50%削減に向けて挑戦を続ける。
 バイデン米大統領が主催した気候変動に関するオンライン首脳会合(気候変動サミット)で、菅義偉首相がこう表明した。従来の26%削減から大幅に上積むことになる。
 自然災害は厳しさを増し、海面上昇に危機感が高まる。脱炭素社会へ向けた意欲的な目標設定は望ましい。だが、その実現は堅実な取り組みがあってこそ可能になる。国際公約であり、達成するために着実に施策を積み上げたい。
 温暖化防止のための「パリ協定」は、産業革命前と比べた今世紀末の世界の気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指す。その実現には50年の排出量を実質ゼロにする必要があるとされる。
 このため世界の多くが「50年実質ゼロ」を掲げている。日本は「50年80%削減」にとどめ、消極性を批判されてきたが、昨年10月にようやく姿勢を転換した。
 サミットでは、取り組み具合の中間評価となる30年の削減目標が重要視された。バイデン氏は05年比50~52%削減を打ち出した。オバマ政権が掲げた目標を大きく上回る。
 先の日米首脳会談の共同声明には、30年までに確固たる行動をとることが盛られている。こうした状況で、日本が26%削減のままでは見劣りすることは明らかだった。
 日本の削減目標は、これまでは各分野での実現可能な数字の積み上げを重視してきた。46%削減はそれでは不十分で、より積極的な取り組みが求められることになる。
 発電量に石炭が占める比率は、先進7カ国(G7)の中で日本が最も高い。依存継続や新規投資には批判が強く、見直しは避けられない。
 政府は昨年12月、温暖化対策と経済成長を両立させる「グリーン成長戦略」をまとめた。洋上風力発電など再生可能エネルギーへの転換や電気自動車(EV)への移行を打ち出した。2兆円の基金で企業の研究開発や普及を支援する。とはいえ、産業界の理解と協力がなければ十分な効果は期待しにくい。
 サミットは招待した各国・地域の首脳40人全員が参加した。バイデン政権が、脱炭素に背を向けたトランプ政治から転換したことを印象づけ、気候変動分野で協調する機運を高めたことは間違いない。対立を深める中国の習近平国家主席は、国際社会と共に地球環境の管理推進に努力すると表明した。
 一方で、気候変動対策も対立の要因となっている。ブリンケン米国務長官は先に、再生エネルギー分野で中国に後れを取っていると危機感を示した。主導権争いが新たな摩擦を生みかねず、注意が必要だ。
 国際エネルギー機関(IEA)は、21年の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比で5%ほど増えるとみる。削減目標を競うのではなく、実現を可能とする対策こそが重要だ。各国の本気度が試される。

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