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2021.04.23 08:00

【米軍機低空飛行】危険な運用は中止せよ

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 四国上空を飛ぶ米軍機の目撃情報が急増している。
 高知県では2020年の年間飛行回数が倍増。愛媛県では同年度の目撃件数が3倍近くに増えた。
 従来見られなかった地域でも目撃が相次いでおり、「異変」を感じさせる事態になっている。住民に恐怖を感じさせるような米軍機の運用は直ちにやめるべきだ。
 四国上空には在日米軍の低空飛行訓練ルート「オレンジルート」がある。県内では長年にわたって、直下の香美市や嶺北4町村の住民らが事故発生の不安や騒音に苦しめられてきた。
 ところが、19年秋以降、これらの地域だけでなく、ルート外の四国中西部での目撃が急増している。
 高知県に寄せられた19、20年度の延べ目撃件数計629件のうち、四万十町やいの町、高知市などが約4割を占めた。戦闘機ではなく、プロペラが四つあるC130輸送機とみられる機体の目撃が多いのも特徴だ。
 専門家は「四国の上空にさらに新しい訓練場所・ルートが設定されている可能性がある」と指摘する。
 本来ならば在日米軍や政府が関係自治体などに情報提供してしかるべき内容であるが、明らかにされていない。
 四国上空での飛行が急増した背景には米中対立があるとみられる。航空戦力を増強し続ける中国軍をにらみ、米軍岩国基地(山口県)は今や極東最大級の航空基地となった。
 今後も四国上空での訓練が増える可能性があり、そうなると当然ながら事故が発生するリスクは高まる。
 高知県では1994年・早明浦ダム湖、99年・土佐湾、2016年・土佐清水沖、18年・室戸沖と、4度もの米軍機墜落事故が起きている。
 17年には、高知県消防防災ヘリと米軍機とのニアミスも発生した。一歩間違えれば大惨事につながりかねない状況がある。
 県は防衛省に対して、危険性の極めて高い超低空飛行や夜間飛行といった訓練を行わないことや、ルートや時期を事前に情報提供することなどを米軍に求めるよう繰り返し要請してきた。しかし、飛行回数は減るどころか急増しており、訴えは無視された形だ。
 日米地位協定に基づき、米軍機の飛行に日本の航空法は適用されない一方、両国政府は「安全性を最大限確保し、住民への影響を最小限にする」との合意を交わしている。
 日本の安全に寄与すべき日米安全保障条約が、住民の安全を脅かしている。重大な事故が起きてからでは手遅れになる。米国は合意を守るべきだ。
 日本と同じように米軍基地のあるドイツやイタリアでは、米軍の事故に対する世論を踏まえ地位協定が見直された。日本が一度も改定せず、在日米軍に特権的な法的地位を与え続けている状況は見過ごせない。
 全国知事会が提言しているように、米軍にも日本の航空法を適用するなど、政府は日米地位協定の抜本的な見直しに踏み出すべきだ。

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