2002.02.11 09:20
土佐の果物語(20) 第3部 (4)品種登録 世に出しちゃりたい
西内小夏の第二点目の特長を西内哲夫さん(57)=高知県安芸郡東洋町=に続けてもらう。
「普通の小夏同士だと、よう受粉せんけど、西内小夏は自分で受粉する力を持っている。ほんで、どんな年でもいっぱいなる。安定した収穫、安定した収入になるっちゅうのがメリットやないろうか」
というのも、普通の小夏は小夏以外のかんきつ類の花粉が付かないと十分、実がならない。さらに、豊作と不作の年が交互に訪れる「隔年結果」が悩みの種でもあった。
毎年、たくさんの実をつける豊産性の西内小夏は、夢のような小夏の誕生だった。でもどうして種がシイナ状になるのか-など、なぞは多い。
「まだまだこいつにも分からん部分があるんよね。小夏の方は『私はこんなもんやに』と言いゆうと思うけんど…」
西内さんがぽつり。
「収穫で忙しくなるのは四月終わりから五月やねえ。普通小夏より少し酸(す)抜けが遅いような…。これで酸抜けが早かったら言うことないんやけど」
宿毛小夏にしても、西内小夏にしても、こっそり自分だけで作って、もうけることもできるはず。宿毛小夏の久保悟さん(51)と西内さんの二人に聞いてみた。何で品種登録を?
「ミカンも世に出してもらった方がうれしいと思うわよ。自分だけで栽培して枯らしてしもうてもねえ。こんな品種ということを、世に出しちゃったらえいという心なのよ」
二人の共通した答えだった。
世に出た一個一個の小夏に“生みの親”の「おいしくなれ」という心も詰まっている。