2002.02.11 09:40
土佐の果物語(18) 第3部 (2)宿毛小夏 「潮風がいいんよ」
「おやじさんが買ってきた二本の小夏が、日陰と日なたに植えてあった。小学生か中学生のころやったろうかねえ、食べ比べると日なたのが『うまいな』と思うた。その時は(木の違いではなく)立地条件が違うからかなあと…。まさか、その木を自分が(品種)登録するとは思ってなかった」
宿毛小夏の登録者の一人、久保悟さん(51)。父親の義明さん(79)の代からかんきつ類を栽培している。
見た目は宿毛小夏も普通の小夏と一緒。違いは「うまいな」と久保さんが感じたその“味”にあった。久保さんはこの発見を「運だけ」とさらりと言うが、「おいしい小夏を作りたい」というプロ意識があったからこそだろう。その後、甘夏やブンタンの木に高接ぎし、品種登録にたどりつく。
「特長言うたら、まず、味よね。糖度が高くて酸が低い。普通の小夏に比べると、果皮は荒いけんど味はどれにも負けん」
“酸(す)抜け”が早いため、普通の露地の小夏より一カ月ほども早く、四月上旬から出荷できる。
三月下旬、木からもぎたての宿毛小夏をもらった。普通の小夏を食べると、まだ「酸っぱい」と感じるこの時期でも甘く、さわやかな味が口の中に広がった。
どうして、こんな味ができるの?
「宿毛の土地柄やね。急激に下がることのない温度と潮風。台風ほどきついと木が枯れるけど、適度な潮風はいいんよ」
肥料のやり方など生産者の努力はもちろんだが、根っこにはこの自然条件が生きている。
宿毛小夏のふるさとは、県内でも一番西。もう一つの代表品種、西内小夏は東の端、安芸郡東洋町で生まれた。西と東…。不思議な組み合わせを感じながら東へ向かう。