2002.02.11 10:00
土佐の果物語(16) 第2部 (8=終)期待 おいしさ再確認!
土佐ブンタンを取り巻く厳しい状況を聞く一方で、こんな期待の声もあちこちで耳にした。
というのも、全国的にはまだまだ知られていない果実。「こんなおいしい果物があったのですか!」などという消費者の賛辞がいまだに届くそうだ。
つまりブンタンの未来もそう捨てたもんじゃない。これからの消費拡大のネックの一つとも言われる皮の厚さや種についても対策が進んでいる。
県農業技術センター果樹試験場の樋口洋造・常緑果樹科長によると、
「種についてはいろいろ議論のあるところで、種があってもいいじゃないかという声もあるのですが…。土佐ブンタンの風味に近い皮の薄い、種のないものや土佐ブンタンでも種がない、もしくは少ないものの研究はしています」
おいしい土佐ブンタンの栽培法も探っている。同試験場の又川浩司さんが続ける。
「果実を甘くするためには植物に適度な水分ストレスを与えることが必要です。雨水など上からの水は通さないが、地中からの水蒸気は通すようなマルチ栽培やかん水の方法、その土地に合った台木メニューなども考えています。あとは皮の問題、これにはいい情報があるんですよ」
農林水産省果樹試験場カンキツ部(静岡県清水市)の研究で、皮に発がん抑制成分オーラプテンが含まれていることが分かったという。皮はマーマレードにと生産者側も再利用を呼び掛けてきただけに、心強い味方の出現だ。
味が乗る前の早出し出荷防止策には、ワインのボジョレ・ヌーボーのように、一斉解禁で売り出すのもいいかも。
高知県で育ち、生産者がこだわって作り続けた土佐ブンタン。輸入果物、ジュース、お菓子とライバルは多い。しかし、負けてはいられない。この一房にたっぷりのおいしさが詰め込まれているのだから。(経済部・竹村朋子)