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1997.09.17 08:03

こうちカワウソ今昔 第3部(5) 増えた時にどうするか

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 絶滅の瀬戸際に追い込まれたニホンカワウソと、増加に転じたニホンカモシカ。同じ国の特別天然記念物でありながら、両者のたどった道は対照的だ。

 では約千三百頭まで増えたといわれる四国のニホンカモシカはこの先、もう安泰なのだろうか。安芸郡馬路村魚梁瀬でカモシカ調査を続ける高知市の「わんぱーくこうちアニマルランド」学芸員の中西安男さん(41)=高知市長浜=は、首を横に振る。

 「四国のカモシカは、全域に薄く広く分布しているわけじゃない。高知と徳島の県境を中心にした一部に集中している。危険な生息の仕方です。もし伝染病が入り込んだ場合、孤立した小さい個体群では壊滅的な打撃を受ける恐れがある。実際本州ではパラポックスという伝染病がはやっているし、九州では皮膚病のかいせんが流行している。それが心配ですね」

 やっかいなことに、四国のカモシカは本州や九州のカモシカに比べて体格やひとみの色などが異なる上、遺伝子レベルでも亜種である可能性が高くなっている。万一絶滅すれば取り返しがつかないのだ。

 その危険を回避するため、中西さんは昭和四十年代までカモシカが生息していた四国西部に分布を広げる方策を考えるべき、と指摘する。もう一つの方策が、動物園による種の保存。この夏からアニマルランドで飼育を始めた四国産のカモシカの子供「ケン」と「メイ」のカップルは、その第一歩である。

    ◇

 増加に伴い全国的に植林などの食害が問題になっているカモシカをめぐっては、昭和五十四年に大きな政策の転換があった。種としての特別天然記念物指定から、地域指定、つまり場所を限定した指定への転換だ。全国十五カ所に保護地域を設ける予定で、本州はいち早く保護地域の設定が完了。後は四国と九州の二カ所を残すのみになっている。

 現在はその移行過程にあるわけだが、既に本州では個体数調整の名目でカモシカの駆除が行われている。この先、正式に場所を限定しての保護に切り替われば、それ以外の地域では駆除の動きが一層加速することだろう。

 保護によって野生動物が増えれば、必ず人間社会と摩擦が起きる。その時にどう対処し、共存を図るか。カワウソは今や保護しようにも姿さえ見えず関係者を嘆かせているが、カモシカは、保護が功を奏した先にもこれまたやっかいな問題が横たわっていることを示している。

 「将来、カワウソが運よく増え始めたとしましょうか。カワウソが養殖池の魚を盗む被害が続出した時にどう対応するか。それを考えるのに、カモシカはいいモデルなんです。彼らの生態を研究することで何か見いだせるんじゃないか。カモシカと共存できなかったら日本人はこの先きっと、どんな動物を保護しても共存なんてできませんよ」

 中西さんはそう言い切るのだ。

高知のニュース こうちカワウソ今昔 N科学・環境

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