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2021.10.19 08:00

【2021衆院選 コロナ対策】科学と教訓どう生かすか

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 新型コロナウイルスの出現によってこの約1年10カ月、国民の生活は大きく様変わりした。
 不要不急の外出自粛など行動制限は長引き、学校行事も次々と中止になった。収束は見通せず、流行「第6波」は不可避との見方も根強い。健康と命に関わるコロナ対策は、衆院選で最も身近で切実なテーマと言えよう。
 この間の政府対応を振り返れば、出遅れたワクチン接種を加速させた一方、人の流れの抑制策では後手に回った印象は拭えない。
 流行に応じた緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の判断では、東京五輪を含めた政治的な日程、観光支援事業「Go To トラベル」など経済への影響緩和を優先したかのような場面が目立った。
 特に、第3波や第4波での宣言解除はそうした姿勢が顕著だったと言わざるを得ない。必ずしも新規感染が抑え込めていない状況で、感染力が強い変異株が国内で広がる兆しがある中でも宣言の解除を急いだ経緯がある。
 確かに、世界的大流行(パンデミック)下で感染防止のブレーキと経済活動のアクセルを踏み分けることは容易ではなかったろう。だが、科学的知見を軽視したかのような対応は国民に不信感を与え、菅義偉前首相の説明不足はさらに不安を増幅させた。
 「専門家より、やや楽観的な分析をされた」。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が政府に呈した苦言は、国民が求める対策と政治の判断との落差を浮き彫りにしたといってよい。
 第4波の大阪、第5波では都市部で医療従事者が「命の選択」を迫られる医療崩壊に陥った。13万人を超える患者が自宅療養を余儀なくされ、入院できずに死に至るケースも相次いだ。菅前首相は退任時、医療提供体制の整備を進められなかったと認めざるを得なかった。政治の責任は免れない。
 英国では議会下院が政府のコロナ対策の検証報告書をまとめた。最初のロックダウン(都市封鎖)が遅れ犠牲者が増えたと指摘した上で「英国史上、最大級の失策」と断じた。一方でワクチン普及は「効果的だった」と評価もしている。
 科学的知見に基づき、常に合理的な検証を欠かさない英政界の厳しい姿勢がうかがえる。この日英の違いを国民はどう見るだろう。
 衆院選の公約では、各党とも第6波への備えとして病床や医療人材の確保、公衆衛生の司令塔機能の強化などを掲げる。厳しさを増す家計に配慮した形で、ほとんどの政党が現金給付策も盛り込んだ。
 総選挙の公約もむろん、各党による検証を経て掲げられていよう。ただし、医療提供体制や調整機能の強化は以前から専門家が指摘してきた課題でもある。命の安全網をどう守るか。政策論を通じて、その実効性と覚悟を見極めたい。

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