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2021.10.18 08:00

【2021衆院選 あす公示】問われる民主主義の修復

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 衆院選があす公示され、31日の投開票に向けて選挙戦が始まる。首相就任から10日後の衆院解散、解散から17日後の投開票と、異例の超短期決戦になる。
 コロナ禍に見舞われて初の大型国政選挙でもある。論戦の軸は今後の新型コロナウイルス対策や、生活と経済の再生に向けた政策になろう。
 一方、岸田文雄首相が就任して政権の「顔」は変わったとはいえ、4年ぶりの衆院選は、この間の政権運営に有権者が審判を下す機会であることも忘れてはならない。
 岸田首相は自民党総裁選への立候補に際し、「政治の根幹である国民の信頼が崩れている。わが国の民主主義が危機にひんしている」と述べた。与党にも自覚があるとすれば、まず問われるのは、その政治不信を招いた安倍・菅政権の総括だろう。
 安倍晋三元首相の下では、森友・加計両学園や桜を見る会の問題が発覚した。首相官邸に対する官僚の忖度(そんたく)がまん延する中、公文書改ざんという民主主義の基盤を揺るがす事態も起きている。菅義偉前首相の下でも、総務省接待や日本学術会議の問題などが明るみに出た。
 いずれも国会を軽視し、説明責任を十分果たさない姿勢が際立った。高知新聞などが今月行った県民世論調査では、森友や「桜」に関する政府説明に8割を超える人が「納得できない」と回答。長期政権のおごりやひずみが生んだ不信感は、曖昧なまま放置されているといっていい。
 国民に納得をもたらす丁寧な説明を欠く政治姿勢は、説明不足や発信力不足の批判を浴びたコロナ対応にも通じるのではないか。
 岸田首相は「信頼と共感を得られる政治」を掲げ、路線の転換をうかがわせる。ただ、その出発点では本来、「負の遺産」の一掃が欠かせないはずだ。安倍氏らへの配慮も取り沙汰される首相の姿勢を、有権者がどう評価するかが鍵を握る。
 安倍・菅路線からの転換では、「成長も分配も」の掛け声の下で、経済政策「アベノミクス」をどう変えるのかも論点になる。
 岸田首相が掲げる「新しい資本主義」はアベノミクスを基礎とした新しい概念という。だが、金融所得課税の強化を当面封印するなど違いはまだ判然としない。選挙戦では具体的な説明が求められる。
 政権交代を訴える野党は、日本維新の会を除いた候補者の一本化を進めてきた。共闘態勢は289小選挙区のうち約220まで積み上げている。
 ただ、各種世論調査の政党支持率で野党勢力はこの4年間、自民党に大きく水をあけられた「1強」を許してきた。野党が政権担当能力を示すには、政権批判だけにとどまらず、経済や外交・安全保障、エネルギーといった幅広い政策をいかに浸透させるかが問われよう。
 今回の衆院選は、民主主義と、コロナ禍で傷んだ社会の修復を、どの政治勢力に託すかの意味を持つ。有権者も投票行動で意思を表したい。

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