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2021.10.09 08:00

【岸田首相所信】「丁寧な説明」はできたか

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 丁寧な説明、丁寧な対話で国民の信頼と共感を得る。岸田文雄首相は初の所信表明演説で、政権運営にこうした姿勢で臨むと訴えた。
 当然のことではある。ただ、菅義偉前首相が支持を失った要因を思えば、あえて強調したようにも映る。
 新型コロナウイルス対応では緊急事態宣言などの発令が繰り返される一方、説明不足がたびたび指摘された。施策への理解は広がらず、感染防止の人流抑制が進まない状況も生まれた。ワクチン接種が他国に類を見ない速度で進んだと演説で前政権を持ち上げても、一連の対策は評価されてきたとは言い難かった。
 コロナ対応は岸田政権でも喫緊かつ最優先の課題だと位置付ける。演説では、安心確保の取り組みの全体像を早急に示す考えを表明した。これまでの施策の不備を検証し、最悪の事態を想定した対策を進めるとする。感染が落ち着き、行動制限の緩和も絡むようになってきた。実効性のある対策が求められる。
 経済政策では「成長と分配の好循環」を柱とする新しい資本主義を掲げた。コロナで傷ついた経済の立て直しは急務となる。「成長か、分配か」ではなく、「成長も、分配も」実現するために政策を総動員する意気込みを見せる。
 新自由主義的な政策から転換することで格差是正を図るとする。だが、具体的な施策はまだはっきりしない。財政再建もおろそかにできない。衆院選をにらんで、痛みを伴う施策には触れたくないというのが本音だろうが、それでは信頼は高まらない。丁寧な説明と対話はあらゆる分野に関わってくる。
 岸田内閣発足を受けた共同通信社の世論調査で、内閣支持率は55%だった。発足直後としては期待したほど高くなかったとの見方もされた。安倍・菅政権からの路線転換を求める意見は7割に迫る。
 国会を軽視し、説明責任を果たさない姿勢が続いたことへの反発だろう。岸田色をどう打ち出していくのか関心が向けられる。
 所信表明で触れなかったのは、忘れていたわけではないだろう。「負の遺産」とどう向き合うのかも政権の評価に影響する。
 森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんについて、世論調査では6割以上が再調査を求めている。自民支持層でも5割を超える。
 「政治とカネ」問題の解明も怠れない。参院選広島選挙区の買収事件を巡る資金問題や、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題の説明も十分とは言い難い。甘利明幹事長の現金授受問題もくすぶる。
 衆院選は首相就任後、そして解散後の極めて短期での実施となる。内閣刷新の勢いで衆院選に臨み、好成績につなげたい思惑だろう。
 新内閣が国民の信任を得て国政を担うという判断自体に異論はない。衆院の任期切れ期間を長くしないという理由もその通りだろう。だが、代表質問は受けても予算委員会での本格論戦を見送るようだ。国会との関係は引き続き問われる。

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