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2021.10.06 08:00

【真鍋氏ノーベル賞】地球温暖化への重い警鐘

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 ことしのノーベル物理学賞は、大気と海洋の循環を考慮した気候変動モデルを開発した真鍋淑郎・米プリンストン大上席研究員(米国籍)ら3氏に授与される。
 真鍋氏は、地球温暖化の予測に関する先駆的な研究を続けた業績が高く評価された。温暖化は今日の地球規模の主要課題だ。
 1950年代から気象に関する研究に関わった。その中で二酸化炭素などの温室効果ガスに着目し、大気の流れと海洋の循環を組み合わせて長期的な気候の変化をコンピューター上でシミュレーションする「大気・海洋結合モデル」を開発した。
 89年に発表した論文は、今後70年間に温室効果ガスの排出量が年間1%ずつ増加した場合、特に北半球の高緯度地域で温暖化が進むと結論付けた。研究が導いた予測は、後の観測でおおむね正しいことが裏付けられているという。
 この予測を世界が真剣に受け止めたとは言い難い。そうした危機意識が、今回の授与を後押ししたのだろう。科学的な知見を温暖化防止に生かすことが求められる。
 温暖化対策の枠組み「パリ協定」は、気温上昇を産業革命前と比べて2度、できれば1・5度に抑える目標を掲げる。0・5度の違いでも生じる影響は相当に大きいようだ。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化のペースが従来分析より10年早まっているという予測を公表した。世界で起きる異常気象に人間の活動が影響していることは「疑う余地がない」と断定し、地球規模の課題と真剣に向き合うように訴えた。
 日本は2050年までの脱炭素社会の実現を改正地球温暖化対策推進法に明記した。国際社会からの批判もあり、途中の30年度には、温室ガス排出量を13年度比46%削減する目標を表明している。真鍋氏の受賞をさらなる加速につなげたい。
 真鍋氏はこれまでにも、先駆的な研究者を増やすことの大切さを訴えている。研究費はもちろん必要だが、さらに設備を使いこなす体制の整備と、研究者の層を厚くすることが必要だと指摘する。
 研究環境が厳しくなっているとの指摘は近年よく聞かれる。政府が実用性を重視した成果を求め、そうした分野に研究費分配を強めているとの批判が繰り返されてきた。
 研究者は研究費を獲得するため、すぐに成果がでる研究しかできなくなってしまう。そうしたことから、日本の科学の体力が奪われることへの懸念が強まっている。
 日本人のノーベル賞受賞者は28人目で、物理学賞では12人目となる。基礎科学を含む幅広い研究分野への支援がなければ、現場に活力が生まれることは期待しにくい。 
 政府もさまざまな政策を打ち出すようになったが、日本の科学技術力を支えるには迫力不足だろう。国内で研究できる環境を整えることが重要なのは言うまでもない。それが成長への基盤となり、次世代につながる原動力となっていくはずだ。

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