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2021.09.30 08:00

【自民総裁選】論戦にも忖度色濃く

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 自民党の総裁選で、岸田文雄前政調会長が新しい総裁に選ばれた。1回目の投票で過半数に届かなかったもののトップに立ち、決選投票でも僅差の2位だった河野太郎行政改革担当相を引き離した。
 来月4日に召集される臨時国会で第100代首相に指名される見通しだ。間近に迫った衆院選で「選挙の顔」を担うことになる。ただし、4候補による論戦はどれだけ国民に浸透しただろう。
 党内有力者の支持を期待して持論を封印した候補者がいたほか、決選投票では勝ち馬に乗ってポストを確保しようとする派閥の思惑も浮き彫りになった。「新たな自民党」を広く発信するどころか、旧態依然とした党の体質を強く印象づけたと言わざるを得ない。
 新型コロナウイルス感染症対策に専念するとして、菅義偉首相が出馬を断念した。内閣支持率が低迷し、党内で衆院選への危機感が広がった状況を踏まえれば、新たな顔ぶれによる論戦は党員・党友のみならず、国民に変化を訴える絶好の機会だったといえよう。
 安倍晋三前首相とその後継となった菅首相の8年9カ月にわたる政権運営をどう総括するか。
 時に強引な手法をいとわず、国会や国民への説明を軽視する政治姿勢は、コロナ禍や東京五輪開催で国民の批判を招いた。その反省に立つのであれば総括は欠かせないテーマだったが、4候補による論戦はその点、物足りなさが残った。
 特に、両政権の「負の遺産」と言われる森友学園を巡る公文書改ざん問題や、党内で頻発した「政治とカネ」問題では顕著だった。討論会では「党が説明責任を果たす必要がある」と口をそろえたものの、岸田氏を含め、はぐらかすような受け答えも目立った。
 票が割れ、決選投票になれば党内有力者の支持が勝敗を分ける。忖度(そんたく)が働いたのは想像に難くない。
 岸田氏は政策的にも、経済格差を是正する「令和版所得倍増計画」を提唱するなど独自色も示した一方、昨年の総裁選では慎重姿勢だった自衛隊の敵基地攻撃能力保有を「有力な選択肢」とするなどぶれがみられた。
 岸田氏は議員票、党員票ともに伸ばして1回目の投票でもトップだった。事前の予想通り、決選投票にはもつれ込んだが、議員票を大きく上積みして河野氏に圧勝した。
 今回の総裁選では多くの派閥が自主投票だったが、議員票の比重が高まった決選投票では、一部を除き実質的に派閥で勝ち馬に乗る動きが顕在化したといってよい。
 従来と違い、選挙への危機感を募らせた若手や中堅議員を中心に派閥の締め付けに抵抗する動きも確かにあった。だが、党全体をみれば、有力者の意向や派閥の力学から脱することができなかったとみるほかあるまい。
 総裁選を通じて国民は新総裁、自民党をどう評価したのか。その結果は衆院選で示されよう。

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