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2021.09.27 08:00

【東電報告書】安全への意識は変わるか

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 柏崎刈羽原発(新潟県)で不正な侵入を検知する設備が複数故障し、代替措置も不十分でテロ行為に対応できない状態が続いた。これは核物質防護への意識が原子力部門全体で低かったことによる。東京電力がまとめた報告書は、防護不備に至る要因をこう分析した。
  防護施設は福島第1原発事故後の経営状況を踏まえて更新せず、使い続けていたことも明らかにした。原発事故の教訓と反省が置き去りにされていることにがくぜんとする。経営を理由に安全をないがしろにする姿勢が容認されるはずがない。
  意図的か、知識不足か、なめているのか。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長はこんな言葉で、核物質防護を軽視する東電への不信感をはき出したことがある。柏崎刈羽原発には核燃料の移動を禁じる事実上の運転禁止命令が出されている。
  東電の報告書は、原因分析と再発防止策を求められたことに応じたものだ。経営状況を勘案したという一連の姿勢に照らせば、こうした手続きを重ねて原発再稼働につなげ、収支を改善し廃炉や賠償の費用を捻出したいと思っていることだろう。
  だが、安全への意識が変わらなければ不祥事は繰り返されかねない。設備や人員の増強にとどまらず、企業風土にまで踏み込んだ意識改革が求められる。
 報告書は、柏崎刈羽原発の防護管理グループの考え方を取り上げている。それによると、侵入検知器が故障した際にも、暗視カメラや巡回強化などの代替措置を取っていれば復旧を急がなくても良いと判断していたという。代替措置は社員1人がカメラ映像の監視と侵入警報への対応を兼務し、警報が鳴った時は監視を中断したそうだ。対応の甘さが浮かび上がる。
  設備にしても、6年程度ごとの更新が先送りされるようになり、15年以上使っているものもあった。故障が増える一方、復旧の遅れも出るようになったと指摘している。
  また、所員が同僚のIDカードで中央制御室に入っていたことを受けて調査した結果、他人のIDカードで防護区域などに入ろうとした事案が12件あったという。危機意識は極めて弱い。
  改善策として、核物質防護規定の見直しや人員増強のほか、本社の原子力部門を新潟県に移転することを打ち出した。規制委はこうした内容を確認して、今後の検査計画を策定することになる。
  検査は早くても1年以上かかるとみられる。その結果を受けて、「自律的な改善が見込める状態」と判断されるまで、運転禁止命令は解除されない。さらに立地自治体の厳しい視線も向けられる。
  原子力規制委員会は、テロ対策が適切になされているかの監視体制を強化する方針を固めたようだ。既に見直したものもあるが、従来の対応では不十分だったことがはっきりした。問題が起きれば重大な結果を招くだけに、最悪を想定した対応が必要となる。

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