2021.09.12 08:43
悔しさをばねに努力結実 高知ファイティングドッグス後期優勝
試合終了直後、12年ぶりの優勝を決めて、マウンド上でハイタッチして喜び合う高知FDナインら(タマホームスタジアム筑後)
先発宮森は、一番の武器である直球がうまく制球できなかった。それでも「チェンジアップとフォークで組み立てられた。内容は不満だけど、今までにない投球ができた」と6回1失点。エースの風格さえ漂わせる新人の頑張りに、攻撃陣が応えた。
七回の同点打は、1軍で活躍するモイネロからもぎ取った。安打でチャンスメークした吉岡も、適時打の浜も追い込まれてからの打撃。「何とか塁に出る」「絶対打ったる」。それぞれ気持ちで放った一打で、チームを引き分けに導いた。
前期は2位に甘んじた。首位香川との天王山に敗れて優勝が遠のいた日、好機に凡打し、失策を犯した新人荻須が涙声でつないだ。
「一生懸命練習した。でも、それがいかに“こなす”だけになってたか。守備、打席で、ここぞの場面を想定せず練習してたんだな、って…」
悔しい胸の内を吐露した言葉が、このチームの伸びしろを象徴していた。「取り組む姿勢が甘くないか?」「やっているつもりになってるだけではないか?」。自分自身に問い続けられる選手が多くいた。
捕手大原は昨年のオフ、ピッチングマシンからのボールで二塁送球する練習を繰り返した。捕球し、二塁に到達するタイムは0.1秒縮み1.8秒台。昨季2割7分だった盗塁阻止率は今季5割を超えた。165センチと小柄な松尾は、バーベルを肩に乗せる100キロのスクワットが、今や180キロ。打率リーグトップの長谷部も、打撃練習で毎回フォームを撮影し確認、修正。攻撃の軸の浜も、今春NPBの選手に教わった下半身主導のスイングを徹底―。おのおのが課題をクリアするため本気になっていた。
成果は如実に表れた。去年と明らかに違う打線のつながり、粘りの選球、1人の選手に頼らずカバーしながら試合をしのぐしたたかさ。チーム打率は10日時点で2割7分8厘。昨年の2割4分7厘、今季前期の2割6分5厘と比べれば、地力は明らかに付いた。
主将サンフォがかみしめるように語る。「去年の悔しさ、前期の悔しさがあったから、僕らは一回りも二回りも大きくなったし、強くなった。みんなが『勝ちたい気持ち』を持っていた」
悔しくて、泣いて、もがいてきた思いがようやく結実した。そんな誇らしい選手たちの手で、吉田監督が5度、宙を舞った。(谷川剛章)