2021.08.17 08:00
【アフガンの混乱】タリバンの自制を求める
2001年に旧タリバン政権が崩壊して以来、約20年ぶりの復権となる。ただ、武力で国内を掌握しても国際社会から政権としての正統性を認められるのは難しい情勢だ。旧政権時の恐怖政治から、国内外で人権侵害への懸念もつきまとう。タリバンには強く自制を求める。
タリバンは1994年、神学生らが難民キャンプから世直しに立ち上がったのが始まりとされるが、実態はゲリラを行う反政府武装勢力である。隣国パキスタンの支援を受けて勢力を伸ばし、98年にはほぼ全土を支配下に置いた。
2001年の米中枢同時テロ後、国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者の引き渡しを拒否し、米英軍の攻撃で政権は崩壊した。その後はパキスタンとの国境地域に逃れ、テロを繰り返した。
転機は昨年2月、米軍撤退を含めた米トランプ政権との和平合意だったろう。バイデン政権が今年4月に撤退を始めると猛攻に転じ、急速に支配地域を拡大した。
首都を制圧したタリバンは「アフガン戦争の終結」を宣言するとともに、「全てのアフガン人が参加する包括的な政府」を樹立する姿勢を表明。女性の教育や労働の権利を尊重する方針も示したという。
イスラム教を厳格に適用した、かつての恐怖政治とは違った姿勢を強調した格好だ。むろん、国際的な孤立を避けたいとの思惑があってこそだろう。
しかし、アフガン国民や国際社会の目は厳しい。タリバン支配地域では戦闘員と結婚させるため、独身女性を強制的に連れ出したという証言もある。暴力を背景にして、原理主義を押し付けるだけでは国民の信頼など得られまい。
アフガン国民は今、軍事侵攻と旧政権への恐怖で混乱のさなかにいることだろう。タリバンが自らの正統性を主張するなら、行動で示すべきだ。治安の維持に加え、外国人や避難民の安全な国外退去をしっかりと保障するべきだ。
混乱の収拾を図るには、国際社会の向き合い方も重要になる。
民主化を崩壊させただけに政権としては認めがたい存在とはいえ、旧政権時のように孤立させると再びテロの温床になりかねない。国連は、国際社会で十分な監視体制を構築するなど主体的な役割を果たさなければならない。
米国の責任は極めて大きい。「テロとの戦い」を振りかざして他国に武力介入した揚げ句、タリバンと政府軍の戦力や情勢を見誤り「(駐留は)国益に合わない」と撤退を始めて戦禍の拡大を招いた。
アフガン国民は「大国の論理」の犠牲になったともいえる。米国はアフガンの和平を実現させる義務がある。