2021.07.31 08:00
【緊急事態拡大】自らの命を守る行動を
東京五輪の開催中にあって、感染急拡大に新たな対応を迫られた格好だ。北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県にも同期間、まん延防止等重点措置を適用する。地方の中心都市でも新規感染者が急増しており、「第5波」が本格的に本県など地方へ波及することも懸念せざるを得ない状況となってきた。
インド由来のデルタ株の猛威はとどまるところを知らない。29日には初めて全国で新規感染者数が1万人を超え、首都圏の1都3県を中心に過去最多を更新する日も目立つ。国立感染症研究所の推計によると、東京では77%がデルタ株に置き換わったという。
より鮮明になった「第5波」に、政府が宣言や重点措置で国民により強いメッセージを発するのは当然のことだろう。とはいえ、専門家が東京五輪を前に予測した通りの感染拡大である。対応が後手に回っている印象は拭えない。
ワクチン接種の進展で65歳以上の感染割合は低いものの、爆発的な感染を踏まえれば医療供給体制の逼迫(ひっぱく)も現実味を帯びる。5月にピークを迎えた「第4波」では大阪が「医療崩壊」に直面し、自宅療養中の患者が入院を待つ間に死亡するケースも相次いだ。
夏場は熱中症のほか、脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる患者も増える傾向がある。救急医療の機能が低下し、救えるはずの命が助からないというような事態は何としても避けなければならない。
しかし、政府の具体的な対応といえば、重点措置で知事に判断を委ねてきた酒類の提供に関し「感染が下降傾向にある場合」との要件を盛り込んで厳格化した程度で新味に欠ける。既に打つ手が限られつつあるのが現実だろう。
さらに、宣言の発令と解除を繰り返してきたことで、「コロナ慣れ」や「自粛疲れ」による国民の危機意識低下も否めない。
政府対策分科会の尾身茂会長は国会で、社会的に危機感が共有されていないことが最大の危機だという考えを示している。それは高知県民も例外とは言えまい。
夏休みに入り、お盆も控える今、都市部の爆発的感染がいつ地方に飛び火するか予断を許さない。6月上旬以降、おおむね1日当たり10人前後で推移してきた県内の新規感染者も、ここ数日は20人前後の水準になっている。感染力が強いデルタ株と疑われる変異株も確認された。
改めて感染対策の基本の意義を認識すべきタイミングだろう。
県境をまたぐ移動や不要不急の外出を控えることは、私たち自身の命や健康を守ることにほかならない。より多くの人が行動で感染を抑制することは、地域にとって「命のとりで」と言える医療現場を守ることにもつながる。