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2021.07.30 08:00

【感染急拡大】「安全安心」を最優先に

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 新型コロナウイルスの国内感染者が急拡大している。新規感染者は1万人を超えた。
 7月初旬には2千人を下回っていた。ところが22日には5千人を超え、増加ペースが速まっている。
 厚生労働省に対策を助言する専門家組織は「これまでに経験したことのない感染拡大」と指摘する。感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)が猛威を振るっている。入院患者の増加で、一般医療への影響も懸念される。
 東京都には12日に4回目の新型コロナ緊急事態宣言が発令されたが、効果は見られない。感染状況は悪化が続き、新規感染者は3千人を上回った。宣言下の沖縄も再び増加傾向となっている。
 埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県は宣言の発令をにらみ、大阪府も病床の状況次第では宣言への格上げを求める意向だ。ほかにも、まん延防止等重点措置の適用を求める動きが出ている。
 こうした状況に、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は、「感染を下げる要因はあまりない」と厳しい見方を示す。一方で拡大を招く要因として、コロナ慣れやデルタ株、東京五輪の開催や夏休みの人出などを挙げている。
 確かに、コロナ禍の収束が見通せない中、繰り返し出される宣言には、人々の行動を大きく変えるほどの力強さがなくなっているようだ。人出の抑制効果にも地域によって濃淡があるようで、さらなる感染状況の悪化が懸念される。
 専門家は、五輪期間中に感染が拡大するとの試算を提示して警戒を呼び掛けていた。それにもかかわらずこの時期に宣言、重点措置の対象を拡大するようでは、政府は知見をないがしろにした批判を免れない。
 選手や大会関係者から検査で陽性者も出ている。もちろんそれを今回の感染拡大と直接結び付けることはできない。だが、多くが無観客開催となっても、宣言下の五輪が人々の心理や行動に与える影響は無視できないだろう。
 五輪の開催意義として菅義偉首相が掲げた「ウイルスに打ち勝った証し」は遠のいてしまった。それに代わるように、国民の安全安心を最優先にする姿勢を打ち出した。しかし、そうした対策がどれほど行われているのか分かりにくい。ワクチン接種が進展することで抑え込みを期待しているようだが、実現するにはまだ時間がかかる。
 尾身会長は「最大の危機は社会一般の中で危機感が共有されていないこと」と警鐘を鳴らした。そのためには首相の明確なメッセージが必要だ。思いが伝わらなければ国民の理解と協力は望みにくい。
 高知県内でもデルタ株と疑われる変異株が確認された。新たな局面に備えなければならなくなってきた。
 ワクチン接種は高齢者の7割が2回目を終えた。国の対応に振り回されるが、若年層への拡大も急がれる。生活面での警戒を怠らず、感染拡大を阻止したい。

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