2021.07.23 08:40

映画「竜とそばかすの姫」好評 高知の風景そのままに

(C)2021 スタジオ地図

細田監督 リモートでロケ
 高知が舞台のモデルとなった細田守監督のアニメ映画「竜とそばかすの姫」が好評だ。県民の注目度は高く、TOHOシネマズ高知では公開3日間で全国の上映館でトップの7464人が鑑賞。「高知の風景の再現度がすごい」「号泣した」との声が聞こえてくる。一昨年から、県内ロケを支援した高知フィルムコミッション(FC)によると、ロケには新型コロナウイルス禍ならではの苦労もあったという。


□リアルこだわり
 細田監督は公開前のインタビューで、モデルに高知を選んだ理由の一つに「川が美しいこと」を挙げている。

 「メインの舞台にしている川が二つあって、一つが仁淀川という青い川。もういっこは鏡川という高知市内を流れる川。ちゃんと川とともにあるまちだなって。川のある高知を舞台にしようということになった」

 ロケはどのように行われたのだろうか。

 2019年9月初め。高知FCに1本の電話が入った。細田監督が設立した「スタジオ地図」のディレクターからで、「次回作の舞台に、高知が最終候補として残っている」と伝えられた。

 始めはピンと来ていなかったというFCの担当者だが、数日後のメールで「あの細田監督が高知を舞台にアニメを…」と事の大きさに気付き、「このチャンスを逃したくない」と準備に入った。

 2週間後には、細田監督やディレクターら4人が来高。浅尾沈下橋(高岡郡越知町)を含め、2泊3日で仁淀川流域などを回った。JR伊野駅から「汽車」に乗ったり、丸の内高校のカヌー部の鏡川での練習に同行したり。高知西高校では、監督自ら、「休日はどう過ごしている?」「お年寄りと若者の土佐弁の違いは」などと、生徒たちにインタビューしていた。

 FCの担当者は「高知の『リアル』を監督自ら感じ取って、アニメにするんだと感じ入った。移動中も『仁淀川の歴史が分かるところはありませんか』『なぜ仁淀ブルーと呼ばれてるの』とか質問されて。リアルにこだわり、物語の背景まで再現するつもりなんだと思った」という。

□写真3000枚
 昨夏にはロケハンで再来高の予定だったが、新型コロナ禍で断念。代わりに東京と高知をビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でつなぎ、リモートで“ロケハン”を行った。

 FCの担当者は、鏡川や波川公園(吾川郡いの町)に出向き、現地を撮影。細田監督から、「もっと画角を振って」「川の対岸にズームを」「朝だけじゃなく、夕方の様子も見たい」と細かく注文が入り、ズーム撮影会は2度行われた。

 ほかにも、よさこい祭りで配布されるうちわ、鏡川べりを歩く人、沈下橋の近くに生えた雑草、陽光を反射する川の流れ、鳥の鳴き声…。19年10月から今年4月ごろまで写真、動画の提供を続け、写真だけでも「3千枚ほど提供した」という。

 待ちに待った全国公開が始まった。FCの担当者は「監督は高知の広い空や澄み切った川を気に入ってくれたようだ」と大喜び。「実際に映画を見て、『あの写真が背景に生かされている』とわくわくした。こんな大きな作品に関われて感動。苦労したかいがあった」と振り返った。(福井里実、大野泰士)

竜とそばかすの姫
 主人公は高知の田舎に暮らし、母親の死をきっかけに歌うことができなくなった女子高校生・すず。50億人が集うネット上の仮想世界「U(ユー)」に分身「ベル」となって参加。歌姫として注目される一方、孤独な存在「竜」と出会い、自分を取り戻していくストーリー。すずの母親役で高知市出身の声優、島本須美さんが参加している。

 16日に全国416館で公開され、18日までの3日間で60万6684人を動員。興行収入は8.9億円を超えた。過去の細田作品の最高記録は「バケモノの子」の58.5億円で、「細田作品史上ナンバーワンのロケットスタート」(東宝宣伝部)という。

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