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2021.07.17 08:00

【相次ぐ撤回】コロナ政策に欠ける熟度

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 新型コロナウイルス感染を巡る政策が混迷を極めている。
 政府は酒類提供を続ける飲食店を感染対策の柱に位置付ける。ところが、新たに打ち出した施策が相次いで撤回に追い込まれた。
 何とか抑え込みたいということだろうが、威圧的な姿勢を振りかざしても効果は期待できない。いとも簡単な引き下がり方は、検討が足りていないことを明らかにする。お粗末と言わざるを得ない。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の地域では、酒類提供の全面あるいは原則禁止などの対応が取り入れられてきた。しかし、こうした要請が守られているとは言い難い。
 宣言や重点措置が長引いて飲食店の経営は厳しさを増している。一方、住民には宣言慣れや自粛疲れが広がっている。経営支援や感染防止への理解を広げることが重要だが、強権的な姿勢を見せたことで事業者らの反発を招いてしまった。
 西村康稔経済再生担当相は、酒類販売事業者に対して、酒類の提供を続ける飲食店との取引をしないように要求する方針を示した。要請を拒む飲食店には、取引金融機関から順守を働き掛けてもらうとした。
 取引関係で強い立場にある金融機関の関与で実効性を上げようと考えたのだろう。しかし、優越的地位の乱用などの批判や疑問が上がり、すぐに撤回に追い込まれている。
 また、酒類販売事業者への取引停止の要請も当初は撤回しなかったが、批判を受けて取り下げた。
 さらに、酒類販売事業者向けの「月次支援金」を巡り、酒類提供停止に応じない飲食店との取引停止を給付要件に求める文書を都道府県に出していた。この文書も廃止されたが、東京都などは事業者に誓約書の提出を求めていた。
 昨年の酒類卸売業者の休廃業は、この20年ほどで最多となっているという。厳しい経営環境を受けての支援金のはずだが、取引を停止すれば直近はもとより、その後の事業上の信頼にも影響する内容だ。経営に大きい打撃を与えかねない。
 コロナ対策の指針となる基本的対処方針には明記されていない方策を持ち出すのであれば、十分な検討を加えておく必要がある。取引金融機関から飲食店への働き掛けを求めて、内閣官房が金融機関を所管する各省庁に協力依頼文書を出している。政府ぐるみで進めようとしていた実態が浮かび上がる。
 しかし、こうした飲食店への対策強化を巡る重要方針について、菅政権内でしっかりと議論して、共通認識を得ていたとは思えない。当事者意識の薄さは、法律に基づいた制度整備よりも強権的な対応を優先したがる意識を感じさせる。
 また、事業者を締め付ける施策に対して官僚の考察も欠落している。無批判に受け入れているようでは、機能的なコロナ対策や景気対策への期待はできなくなる。
 これには野党はもとより、与党からも反発の声が上がっている。混乱の責任も曖昧にできない。

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