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2021.06.21 05:00

【米露首脳会談】対話で着実に緊張緩和を

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 「冷戦終結後最悪」と言われるまで関係が悪化した米ロの首脳会談がスイス・ジュネーブで開かれた。米バイデン政権発足後、初めての直接会談で、両国関係の今後を占う意味で注目された。
 火種となっている米国へのサイバー攻撃や人権問題では両国間に横たわる溝の深さを印象付けた一方、核軍縮やリスク軽減措置に関する「戦略的安定対話」を始めることで合意した。緊張関係の中でも核軍縮に向けた責任を確認し合った意義は小さくない。
 世界の核兵器の約9割を保有する米ロは、トランプ政権下で中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効するなど緊張が高まっていた。
 バイデン政権発足で関係改善も期待されたが、ロシアの関与が疑われる米大統領選への干渉やサイバー攻撃などで制裁と報復の連鎖に陥った。米国が重視する人権問題でもロシアによる反体制派締め付けを巡り対立し、互いに大使を一時帰国させる異常な状況となっている。
 会談でも、両首脳は緊張感を隠さず、多くのテーマで議論は平行線をたどった。
 バイデン氏が対応を求めた対米サイバー攻撃はプーチン氏がロシア政府の関与を真っ向から否定。反体制派ナワリヌイ氏弾圧にも「ロシアの法律を犯した」と繰り返し、人権侵害との批判を突っぱねた。
 会談終了後、記者会見が別々に開かれたことは、現在の両国の距離感を如実に表している。
 それでも、安全保障に関わる重要な課題で一歩前進したことは評価できよう。それぞれ大使を復帰させるほか、核戦略やサイバー攻撃で対話を継続することで一致した。
 共同声明では「核戦争に勝者はなく、決して行われてはならない」との原則を守ると確認し合った。1985年に当時のレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長が打ち出し、両国間の協議で前提となってきたが、トランプ前政権が再確認を拒否していた。
 概念的な約束とはいえ、共通認識の有無は協議の進展にも関わってこよう。米国によると、両首脳が今年1月に延長で合意した新戦略兵器削減条約(新START)の失効をにらんだ「戦略的安定対話」には外交官に加え、軍の専門家も参加するという。対話を着実に積み重ね、緊張緩和と核軍縮につなげたい。
 米国は民主主義国の結集を図り、専制主義的な言動を繰り返す中国やロシアに対抗する外交姿勢を鮮明にしている。米ロ首脳会談を前にした先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも対中包囲網の形成に動き、中国は激しく反発した。敵対視すれば溝は深まるばかりだ。
 そうした状況は、決して本来あるべき「国際協調」ではないだろう。地域紛争や核軍縮、地球温暖化対策など重要なテーマは中国やロシアの協力なくして解決できない。
 対話のチャンネルを維持し、理解し合える接点を探る。大国のリーダーにはその姿勢が欠かせない。

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