2021.06.15 08:00

【G7首脳会議】求められる中国との対話

 先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は、多国間主義やルールにのっとった国際秩序に基づき行動することを掲げた。米政権の交代を受けて、国際的な協調体制づくりに取り組む方針に立ち戻ったことを歓迎したい。
 この文言は同時に、今サミットの陰の主役と言われた中国を意識していることは明らかだろう。民主主義や人権を擁護する立場を鮮明にしつつ、覇権の拡大をけん制した。
 ただ、中国への対抗姿勢が強くある一方で、貿易相手国としての存在感にも大きいものがある。各国の対中認識には温度差がある。
 多国間主義は間口を広くして深みを作り出すことが大切になる。対話の重要性はますます大きくなっていく。対立姿勢ばかりが先走って緊張が強まるようなら、G7の結束にも亀裂が入りかねない。
 日本にとっても中国との関係は複雑なだけに、その向き合い方が問われている。米中対立が強まる中、米国に足並みをそろえるだけでは対中関係が保てなくなる。独自の立ち位置を見定めた慎重な日本外交が求められる。
 首脳声明は先の日米首脳会談と同様に、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促すことを明記した。台湾情勢を盛り込んだのは初めてという。自由で開かれたインド太平洋の重要性を明記し、中国の緊張を高める試みに反対を表明した。
 また中国に対し、少数民族ウイグル族の人権抑圧を批判し、香港の高度な自治を尊重するように求めた。ウイグル抑圧は、サプライチェーン(供給網)からの強制労働根絶を求める主張にもかかわっている。国際社会による調査を中国が受け入れることが必要だ。
 中国は、声明が中国を中傷し、内政に干渉したと反発している。対立を誇張することへの警戒はG7内にもあるが、中国が行動を自制しなければ摩擦は大きくなる。
 習近平指導部が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するため、G7は発展途上国に対してインフラ整備を支援する新構想でも合意した。また新型コロナウイルスを巡っては、途上国に10億回分のワクチン供与に相当する支援を打ち出した。パンデミック(世界的大流行)終息の目標を2022年に設定した。精力的な対応を期待したい。
 温室効果ガスは30年までに10年比でほぼ半減させる方針を確認した。日本が掲げる13年度比46%減では達成できないようだ。国際公約として日本は対策の加速を迫られる。
 東京五輪・パラリンピックは開催への支持を取り付けた。だが、国内では開催で感染が拡大する懸念は根強く、支持は高まっていない。
 菅義偉首相にすれば、開催すれば雰囲気も変わり、その熱気を衆院選の弾みとしたい思惑があるのだろう。だが、まず向き合うべきは、不安を抱き説明を求める国民とだろう。それをないがしろにするようでは政治不信を強めてしまう。

カテゴリー: 社説

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